コレステロール合成経路の阻害が脂質過酸化による細胞死を抑制する仕組みを解明~肝疾患に対する治療法の開発に繋がる研究成果~

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2024-03-14 自治医科大学

概要

フェロトーシスは細胞膜のリン脂質の過酸化によって引き起こされる細胞死であり、近年、神経変性疾患や虚血再灌流による臓器障害、非アルコール性脂肪肝炎などの様々な病態に関与することが明らかになってきています。フェロトーシスの制御因子の探索はこれらの治療方法の開発に繋がると期待されていました。

今回、自治医科大学 分子病態治療研究センター 炎症・免疫研究部の山田直也 研究員、唐澤直義 講師、高橋将文 教授、内分泌代謝学部門 石橋俊 前教授らは、東北大学大学院 農学研究科 伊藤隼哉 助教、仲川清隆 教授、九州大学大学院 薬学研究院 山田健一 教授らとともに、コレステロール合成経路の最終段階を担う酵素であるDHCR7の阻害がフェロトーシスを強力に抑制する作用があることを新たに発見しました。

研究グループは、遺伝子欠損の影響を網羅的に探索する手法であるゲノムワイドCRISPRスクリーニングを用いて、遺伝子の欠損によってフェロトーシスに対する抵抗性を獲得する遺伝子としてDHCR7を同定しました。この機序として、DHCR7の基質であり、プロビタミンD3としても知られる7-デヒドロコレステロール(7-DHC)がラジカルスカベンジャーとして機能することが、DHCR7の阻害によるフェロトーシス抑制作用を担っていることがわかりました(図)。さらに、DHCR7阻害が肝臓におけるフェロトーシス関連病態を抑制するかを検証するために、DHCR7阻害剤(AY9944)の効果をマウスにおいて検証したところ、DHCR7阻害剤は肝臓の虚血再灌流障害を抑制することが明らかになりました。今後、DHCR7の阻害が他のフェロトーシス関連疾患に対しても有効であるか、さらなる検証が待たれます。

本研究は英国科学雑誌Nature Communicationsに3月12日付けでオンライン掲載されました。
(DOI 10.1038/s41467-024-46386-6)

コレステロール合成経路の阻害が脂質過酸化による細胞死を抑制する仕組みを解明~肝疾患に対する治療法の開発に繋がる研究成果~
図. DHCR7阻害下では7-DHCが蓄積しフェロトーシスが抑制される

論文情報

掲載誌:Nature Communications
タイトル:Inhibition of 7-dehydrocholesterol reductase prevents hepatic ferroptosis
under an active state of sterol synthesis

著者:Naoya Yamada*#, Tadayoshi Karasawa*#, Junya Ito, Daisuke Yamamuro,
Kazushi Morimoto, Toshitaka Nakamura, Takanori Komada, Chintogtokh Baatarjav,
Yuma Saimoto, Yuka Jinnouchi, Kazuhisa Watanabe,
Kouichi Miura, Naoya Yahagi, Kiyotaka Nakagawa, Takayoshi Matsumura,
Ken-ichi Yamada, Shun Ishibashi, Naohiro Sata, Marcus Conrad, Masafumi Takahashi#
(*共同筆頭著者, #共同責任著者)

DOI:10.1038/s41467-024-46386-6

その他

詳細は下記をご参照ください。

細胞遺伝子工学
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