ゼブラフィッシュにおける簡便な複数sgRNA発現方法の開発

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2018/09/12  国立遺伝学研究所

A tRNA-based multiplex sgRNA expression system in zebrafish and its application to generation of transgenic albino fish.

Tomoya Shiraki and Koichi Kawakami

Scientific Reports 8, Article number: 13366 (2018) DOI:10.1038/s41598-018-31476-5

CRISPR/Cas9システムの開発により、ゼブラフィッシュを含む様々な生物種において簡便かつ迅速にゲノム編集を行うことが可能になりました。さらにトランスジェニックフィッシュにおいてCas9遺伝子とsgRNAを発現させ、組織特異的に変異を導入する方法が開発されてきました。しかしながらこれまでの方法では、Cas9による二重鎖切断ののちに非相同末端結合により変異が作製されるため、その変異が必ずしも遺伝子の機能破壊を引き起こさないという問題がありました。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の白木知也 特任研究員と川上浩一 教授の研究グループは、この遺伝子の破壊効率を上げ、さらに複数の遺伝子を同時に破壊するために、複数のsgRNAを一つの転写産物から効率よく産生する手法をゼブラフィッシュにおいて開発しました。さらにこの方法を利用して黒色の色素がなくなるアルビノのトランスジェニックゼブラフィッシュ(Tg-albino)を作出することに成功しました。

本研究では、複数のsgRNAとtRNAを連結した前駆体RNAをトランスジェニックゼブラフィッシュに導入しました。すべての細胞はtRNAのプロセシング機構をもっており、tRNA部分が前駆体RNAから切り出される際に、複数の各々のsgRNAが産生されることを示しました。また私たちは実際に、ゼブラフィッシュのアルビノ遺伝子に対する3種類のsgRNAとtRNAを連結した前駆体RNA、およびCas9遺伝子を発現するトランスジェニック個体においてアルビノの表現型が観察されることを見出しました。

本手法を用いることにより、組織・時期特異的に複数の遺伝子を高効率で破壊することが可能になると考えられ、今後のゼブラフィッシュを用いた遺伝学研究の推進につながると期待されます。

本研究は科研費補助金(JP15H02370, JP16K20983, JP16H01651, JP18H04988)、日本医療研究開発機構ナショナルバイオリソースプロジェクトおよびナショナルバイオリソースプロジェクトゲノム情報等整備プログラムの支援を受けて行われました。

Figure1

図:(A) tRNAのプロセシングを利用した複数sgRNAの発現方法の概略。 (B) アルビノトランスジェニックフィッシュ(Tg-albino)作製用コンストラクト。albino (slc45a2) 遺伝子に対する3種類のsgRNAを発現する。(C-E) Tg-albinoでは黒色素が消失し、色素合成阻害剤(PTU)処理個体や黒色素細胞のできないnacre変異体と同程度に透明になる。 (C) 三日齢のTg-albino系統。(D)成魚のTg-albino系統。(E) 五日齢のTg-albino系統におけるGFP蛍光イメージ像。

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