2024-08-20 国立遺伝学研究所
小型の淡水エビ類である「リュウグウヒメエビ」は、和名に対応する学名Caridina laoagensisの形態的特徴と必ずしも一致しないことが知られており、その扱いにおいて混乱が生じていました。国内の図鑑や文献では、本種は頭胸甲と腹節下部に見られる黒色斑が特徴とされています。しかし、黒色斑が全く見られない個体も報告されており、同じくリュウグウヒメエビとして扱われています。
今回、国立遺伝学研究所の福家悠介研究員とトレンドデザイン株式会社の丸山智朗氏は、本州および琉球列島から得られた「リュウグウヒメエビ」について、遺伝解析と形態形質の検討を行い、本種に2つのタクソンが含まれていることを認めました。先行研究の比較から、これらはC. laoagensisとC. tupaiaと同定されました。両種を区別できる形態形質に基づいて、過去の記録を精査したところ、和名リュウグウヒメエビを与えられたタクソンはC. tupaiaである可能性が高いことが判明しました。そこで本研究は、C. tupaiaに標準和名リュウグウヒメエビを、C. laoagensisには新標準和名ウンモンヒメエビを与えることを提案しました。
図:リュウグウヒメエビ(左)と今回新しく和名が提唱されたウンモンヒメエビ(右)。著者撮影。
Confusion between Caridina laoagensis and Caridina tupaia in Japan
Yusuke Fuke & Tomoaki Maruyama
Cancer (2024) 33: 15–23. DOI:10.18988/cancer.33.0_15