認知機能の低下には、アミロイド斑の形成と神経炎症がかかわることを見出した。

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 次世代アルツハイマー病モデルマウスの行動解析から、

2019-04-24 国立長寿医療センター

アルツハイマー病研究部の、榊原泰史 研究技術員、関谷倫子 発症機序解析研究室長、飯島浩一 部長らは、理化学研究所脳神経科学研究センター・神経老化制御研究チーム(斉藤貴志 副チームリーダー、西道隆臣 チームリーダー)との共同研究により、脳内でのアミロイド斑の形成とそれに伴う神経炎症(グリア細胞の異常活性化)が記憶学習能の低下を引き起こすことを見出しました(図1)。

アミロイド班形成(図1)

図1.認知機能の低下にはアミロイド斑の形成と神経炎症がかかわる

アルツハイマー病の特徴のひとつに、脳内にアミロイドβペプチド(Aβ)が凝集して形成されるアミロイド斑の出現が挙げられます。しかし、マウスのAβは凝集性を示さないので、マウス脳内でアルツハイマー病の病理を再現するためにはヒトのAβが必要になります。 理研で開発されたモデルマウスでは、ヒトのアルツハイマー病本来の病態に近づけるため、「ノックイン技法」を用いてマウスAβに代わりヒトAβが多量に作られるようになっています(参考文献1)。

今回の研究から、ヒトAβが多量に作られ、さらに凝集してアミロイド斑を形成するように “しかけ”をしたマウスの脳では、グリア細胞が異常に活性化され、さらに記憶学習能が低下していました(図1, 上)。一方で、ヒトAβが多量に作られるだけで、アミロイド斑を形成しないマウスの脳では、グリア細胞は活性化せず記憶学習能も正常でした(図1, 下)。 このことから、アルツハイマー病の認知機能障害は、脳内のアミロイド斑と神経炎症が原因となって引き起こされると考えられます。また今回の研究結果から、脳内にAβが多量にあれば必ずアミロイド斑が形成されるわけではなく、脳内でアミロイド斑の形成を促進する因子が存在する可能性も示唆されました。

本研究成果は、平成31年3月20日付けで英国科学誌のBMC Neuroscienceに掲載されました(参考文献2)。 またこれらの研究は、国立長寿医療研究センター研究開発費、文部科学省科研費、大幸財団からの研究助成を受けて行われました。

参考文献

1)Saito T et al., Nat Neurosci 17(5):661-663, 2014. doi: 10.1038/nn.3697.

2)Sakakibara Y et al., BMC Neurosci 20:13, 2019. doi: 10.1186/s12868-019-0496-6.

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