海から川や湖へ!魚の淡水進出を支えた鍵遺伝子の発見

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DHAを自分で合成すれば、海から離れても生きられる

2019-05-31 国立遺伝学研究所

A key metabolic gene for recurrent freshwater colonization and radiation in fishes.

Asano Ishikawa, Naoki Kabeya, Koki Ikeya, Ryo Kakioka, Jennifer N. Cech, Naoki Osada, Miguel C. Leal, Jun Inoue, Manabu Kume, Atsushi Toyoda, Ayumi Tezuka, Atsushi J. Nagano, Yo Y. Yamasaki, Yuto Suzuki, Tomoyuki Kokita, Hiroshi Takahashi, Kay Lucek, David Marques, Yusuke Takehana, Kiyoshi Naruse, Seiichi Mori, Oscar Monroig, Nemiah Ladd, Carsten J. Schubert, Blake Matthews, Catherine L. Peichel, Ole Seehausen, Goro Yoshizaki, and Jun Kitano.

Science 31 May 2019: Vol. 364, Issue 6443, pp. 886-889 DOI:10.1126/science.aau5656

魚は、海から川や湖などの淡水域へ何度も進出しながら、さまざまな形や性質をもつ種に進化していきました。海と淡水域は、栄養分や浸透圧などに大きな違いがあるため、一部の魚は淡水域に何度も進出する一方で、全く淡水域に進出できない魚も多くいます。しかしながら、その違いは分かっていませんでした。

この度、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の石川麻乃助教と北野潤教授らの国際共同研究チームは、進化生物学のモデル生物であるトゲウオを用いて、魚が海から淡水域へ進出する際に鍵となった遺伝子を発見しました。

鍵となった遺伝子は、必須脂肪酸「ドコサヘキサエン酸 (DHA)」を作るのに必要なFads2遺伝子でした。DHAは、本来、海の餌には多く含まれますが、淡水域の餌にはあまり含まれていません。本研究チームは、淡水域に進出したトゲウオでは、このDHAを作るのに必要なFads2遺伝子が増えているため、DHAの少ない淡水の餌でも生きられることを発見しました。Fads2遺伝子は、他の幅広い種類の魚でも、海水に生息する種に比べ、淡水域に進出した種で増えていたことから、魚の淡水域への進出の鍵となる役割を果たしてきたと考えられます。

本研究は、国立遺伝学研究所、東京海洋大学、アクアトト岐阜、フレッドハッチンソン癌研究所、北海道大学、スイス連邦水科学技術研究所、沖縄科学技術大学院大学、京都大学、龍谷大学、福井県立大学、水産大学校、ベルン大学、基礎生物学研究所、岐阜協立大学、スペイン水産養殖研究所からなる共同研究チームによっておこなわれました。

本研究は科研費(15H02418, 23113007, 16H06279, 26870824, 16K07469)、旭硝子財団助成金、住友財団助成金、学術振興会特別研究員奨励費(11J04816 ,16J06812)、スイス連邦水科学技術研究所内部資金、スイス連邦科学基金などの助成のもと実施されました。

この成果は2019年5月31日(米国東部標準時)に米国科学雑誌「Science」に掲載されました。

Figure1

図:イトヨの淡水域への進出とDHA合成酵素Fads2遺伝子の増加
淡水域に進出できなかったニホンイトヨは19番染色体上にFads2遺伝子を1つしか持たないのに対し、淡水域に進出したイトヨは、19番染色体上と12番染色体上に2つのFads2遺伝子を持つ。淡水域に進出し、そこで一生を過ごすようになったイトヨでは、19番染色体上のFads2遺伝子がさらに増加している。

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