2019-06-13 京都大学
今堀博 工学研究科教授(兼・高等研究院物質–細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)連携主任研究者)、東野智洋 同助教らの研究グループは、現在ポルフィリン色素の中で世界最高のエネルギー変換効率を示す色素を上回る性能をもつ、新規ポルフィリン色素を開発することに成功しました。
これまで、ドナー・アクセプター構造をもつポルフィリン色素のエネルギー変換効率が最高で13%という一方で、縮環ポルフィリン色素はエネルギー変換効率が低く、あまり注目されてきませんでした。しかし今回、適切な分子設計を行うことにより、世界で初めて縮環ポルフィリン色素で10%を超えるエネルギー変換効率を達成しました。本結果は、縮環ポルフィリン色素に再びスポットライトを当て、色素増感太陽電池の新たな分子設計指針を与えたと言えます。また、現在世界最高のエネルギー変換効率を示す色素を参照色素として太陽電池性能比較を行い、今回開発した色素が参照色素を上回る性能を示すことを明らかにしました。
本研究成果によって、さらなる太陽電池作製条件の最適化により参照色素で13%のエネルギー変換効率を達成することで、今回開発した色素で13%を超える世界最高のエネルギー変換効率が実現できることが期待されます。さらには、本研究における分子設計指針をもとに色素の改良を行うことで、実用化における一つの目安とされている15%のエネルギー変換効率の実現も視野に入り、色素増感太陽電池の実用化に向けて大きく前進することが期待されます。
本研究成果は、2019年6月13日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されました。
図:新しく開発した色素により、色素増感太陽電池のエネルギー変換効率の増大が期待される(イラスト:高宮泉水)
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1021/jacs.9b03302
Yuma Kurumisawa, Tomohiro Higashino, Shimpei Nimura, Yukihiro Tsuji, Hitomi Iiyama and Hiroshi Imahori (2019). Renaissance of Fused Porphyrins: Substituted Methylene-Bridged Thiophene-Fused Strategy for High-Performance Dye-Sensitized Solar Cells. Journal of the American Chemical Society.
日刊工業新聞(6月13日 29面)に掲載されました。
詳しい研究内容について