iPS細胞やES細胞の分化能を決定する因子を同定

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未分化細胞由来の奇形腫発生のない安全な細胞治療法の確立を可能に

2018-02-09 公益財団法人先端医療振興財団,日本医療研究開発機構

iPS細胞やES細胞は多能性幹細胞と呼ばれ、未分化の状態を維持しながら無限に増殖する能力と、色々な細胞や組織に分化する能力を併せ持っています。しかし分化する能力があるかどうか、未分化な状態で培養している間は判断が出来ず、実際に分化させないと分化能力があるかどうかはわかりません。そして、もし分化する能力に問題がある多能性幹細胞を特定の細胞や組織に分化させると、分化しない細胞から奇形腫と呼ばれる腫瘍が形成され、治療上問題となります。このためiPS細胞やES細胞由来の分化細胞を使う細胞治療では、分化させる前に分化の抵抗性があるかどうかの判断ができれば、腫瘍形成のない安全な細胞治療の実施が可能となります。しかし未分化な状態で分化能力があるか、ないかの判定ができる指標となるマーカ分子の存在は不明でありました。

(公財)先端医療振興財団 細胞療法研究開発センター*1は、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞やiPS細胞由来神経幹細胞の臨床応用の前に、これらの分化細胞をヒトに移植した場合、腫瘍を形成する可能性があるかどうかの安全性試験を数年前からマウスやラットを使って実施しています。当センターで分化抵抗性を示す細胞と示さない細胞で、発現している分子はどのように違っているのかを比較検討したところ、胎児の臓器形成に必要な分子として知られていたChromatin Helicase DNA binding domain 7(CHD7)が、多能性幹細胞でも分化を始めるスイッチのような役割を果たしていることを発見しました。つまりCHD7の発現量がある値以上であれば細胞は分化する能力を保持していますが、それ以下であれば細胞は分化する能力を失うということが分かりました。

今回の研究成果を基に、未分化状態で培養しているiPS細胞やES細胞のCHD7分子の発現量を測定することで、分化誘導をかける前に、分化抵抗性のない細胞を簡便に選定することができます。そしてこのような分化抵抗性のない細胞を臨床に使うことで安全なiPS細胞由来細胞の移植医療に大きく貢献できると考えています。今回の研究は、AMED*2の安全性評価の研究の競争的研究資金を活用して実施され、成果は1月10日に配信されるScientific Reports誌に発表しました。

iPS細胞やES細胞の分化能を決定する因子を同定

用語説明

*1:(公財)先端医療振興財団 細胞療法研究開発センター
細胞治療・再生医療の研究開発に特化した組織であり、神戸ポートアイランド地区に集積した近隣の研究・医療インフラを活用しながら、有望な基礎シーズを臨床研究として開発を手掛け、細胞の品質規格の設定研究、細胞製剤の安全性ガイドライン設定に向けた提言案の策定、前臨床安全性試験の実施、PMDAとの薬事開発相談の実施、細胞製剤の委託製造などを実施しています。
*2:AMED
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
お問い合わせ先
公益財団法人先端医療振興財団
細胞療法研究開発センター 本田、川真田

AMED事業に関するお問い合わせ先

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
戦略推進部 再生医療研究課

 

細胞遺伝子工学
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