胃が免疫誘導にも重要なことを初めて解明~2型自然リンパ球によるピロリ菌感染時の防御機構を発見~

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2020-04-02 理化学研究所,日本医療研究開発機構

理化学研究所(理研)生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの佐藤尚子専任研究員、大野博司チームリーダーらの国際共同研究グループは、マウスの胃に、細菌感染に対して防御的に作用する免疫応答が存在することを発見しました。

本研究成果は、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ[1])感染時の胃における新たな免疫応答と防御機構を明らかにしたもので、今後、免疫応答を人為的に誘導することで感染予防につながると期待できます。

これまで、胃は主に食物を消化・殺菌する臓器とされ、免疫応答の要である腸管と比較して、免疫誘導への関与は低いと考えられてきました。

今回、国際共同研究グループは、これまで共生細菌の影響を受けないと考えられてきた2型自然リンパ球(ILC2)[2]が、胃では細菌依存的であり、免疫グロブリンA(IgA)[3]の産生を誘導して防御的に作用することを明らかにしました。また、ピロリ菌感染マウスの解析により、ILC2がIgA誘導の要になっていることも明らかになり、免疫誘導である臓器として胃の重要性を初めて示しました。

本研究は、科学雑誌『Immunity』(4月14日号)の掲載に先立ち、オンライン版(4月1日付:日本時間4月2日)に掲載されます。

※国際共同研究グループ
理化学研究所 生命医科学研究センター 粘膜システム研究チーム
チームリーダー 大野 博司(おおの ひろし)

(横浜市立大学大学院免疫生物学研究室、神奈川県立産業技術研究所)

専任研究員 佐藤 尚子 (さとう なおこ)
研究員 加藤 完 (かとう たもつ)
テクニカルスタッフⅡ 影山 友子(かげやま ともこ)
テクニカルスタッフⅠ 新 奈緒子(あたらし なおこ)
大阪大学大学院 医学系研究科・医学部 感染症・免疫学講座
教授 茂呂 和世(もろ かずよ)

(理化学研究所 生命医科学研究センター 自然免疫システム研究チーム

チームリーダー)

准教授 本村 泰隆(もとむら やすたか)
大阪大学 微生物病研究所 感染微生物分野
准教授 三室 仁美(みむろ ひとみ)
特任研究員 木下 僚(きのした りょう)
特任研究員(当時) 黒田 英介(くろだ えいすけ)
仏国 パスツール研究所 免疫学部門 自然免疫ユニット

(Innate Immunity Unit, Department of Immunology, Institut Pasteur)

ラボヘッド ジェームス・ディサント(James P. Di Santo)
研究支援

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業研究活動スタート支援「胃におけるILCsの局在とその役割解明に関する研究(研究代表者:佐藤尚子)、同科学研究費補助金基盤研究(B)「抗原取り込みに特化した特殊腸管上皮M細胞の分化と機能(研究代表者:大野博司)」、同基盤研究(B)「ナチュラルヘルパー細胞の分化機構解明(研究代表者:茂呂和世)、同挑戦的研究(萌芽)「 細菌外膜小胞への選択的物質導入機構の解明(研究代表者:三室仁美)」、日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」研究開発領域(研究開発総括:清水 孝雄)研究開発課題名「オミクス解析に基づくアレルギー発症機構の理解と制御基盤の構築」(研究開発代表者:大野博司)、武田科学振興財団(佐藤尚子)、持田記念医学薬学振興財団(佐藤尚子)および内藤記念科学振興財団(三室仁美)による支援を受けて行われました。

背景

これまで、胃は主に食物を消化・殺菌する臓器であり、小腸や大腸と比べて免疫学的な寄与は低いと考えられてきました。また、胃は殺菌のために強酸性に保たれていることから、共生細菌はほとんど存在しないと考えられていましたが、近年、数は腸管と比べて少ないものの、ヒト、マウスともに共生細菌が存在することが明らかになっています注1-2)

ヒトではピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に感染すると、潰瘍やがんが誘導されることが知られており、実際に、胃の不調を感じた際にはピロリ菌感染を疑い除菌を行います。しかし、ピロリ菌保有者であっても症状がない時期もあり、どのような免疫応答が感染防御に関与しているかはあまり分かっていません。特に、近年その多様な機能で注目されている自然リンパ球(ILCs)については、胃における役割に関してこれまで報告されていませんでした。

注1)Tlaskalova-Hogenova H. et al. Cell mol Immunol.2011 (PMID:21278760)

注2)Dicksved J. et al. J Med Microbiol. 2009 (PMID:19273648)

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