2020-05-18 金沢大学,東京医科歯科大学,理化学研究所
金沢大学医薬保健研究域薬学系の大宮寛久教授,隅田有人助教,大学院医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士前期課程2年の佐藤由季也さん,医薬保健学域薬学類5年の中村渓さんの研究グループは,東京医科歯科大学生体材料工学研究所/理化学研究所生命機能科学研究センターの細谷孝充教授/チームリーダー,理化学研究所創発物性科学研究センターの橋爪大輔チームリーダーと共同で,さまざまな測定技術を駆使しながら可視光を吸収できるように設計した有機ホウ素化合物に光照射することで,高い反応性を持つ化学種である炭素ラジカルを発生させることに成功しました。有機化合物を高価な光触媒を用いることなく,可視光により直接励起し,直鎖および分岐鎖の炭素ラジカルを発生させた世界初の例です。
本研究では,ホウ素原子が環状分子骨格に埋め込まれた「ボラセン」から調製される有機ホウ素アート錯体を独自に設計・合成しました。有機ホウ素アート錯体と可視光により発生させた炭素ラジカルは,化学反応の炭素源として活用でき,これまで到達困難とされていた複雑かつかさ高い有機化合物などをつくり出すことができます。
本研究成果は,有機ホウ素化合物と光エネルギーを組み合わせることで可能となる新しい有機合成技術を提供したといえ,創薬研究などをより一層加速させるものと期待されます。