全身性エリテマトーデスへのコロナワクチンの影響を分析~中期的な疾患活動性と再燃への影響について~

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2022-10-25 京都大学

吉田常恭 医学研究科博士課程学生、辻英輝 医学部附属病院助教、大西輝 医学研究科特定講師らの研究グループは、指定難病である全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)の疾患活動性ならびに再燃に対するコロナワクチン影響について調査しました。

SLEは女性に多く発症し、皮膚、粘膜、筋骨格系、腎臓、神経など全身の多臓器に渡って障害を起こす、国が指定する難病疾患です。現時点で要因は明らかではありませんが、何らかの感染や薬剤、ワクチン接種がきっかけで新規にSLEが発症したり、あるいはもともと罹っていたSLEが再燃したりする事が時に経験されます。これは、外的な刺激により、体内の免疫系が異常に活性化するためと考えられています。特にワクチンに関しては接種によってもともとのSLEが再燃してしまう可能性はSLE患者さんにとっては大きな懸念材料で、ワクチン接種を避ける理由にもなっています。2019年12月より全世界に爆発的に流行しているSARS-CoV2こと新型コロナウイルス感染症においても、そのワクチンを接種した後にSLEの新規発症やもとの症状の悪化を報告したレポートが多数ありました。しかし、これらは実際にワクチン接種とSLEの発症、再燃との関係が実際に関連している因果関係か、接種後にたまたま発症、あるいは再燃しただけの前後関係かは判断がつきませんでした。

今回、研究チームは、SLEへのコロナワクチンの影響について、日本人集団からなる74名のSLE患者さんの情報を収集し、それと同時期にワクチンを接種していない患者さん74名を1対1でマッチングさせ、疾患活動性や再燃について経時的に比較検討しました。その結果、コロナワクチン2回目接種後90日まで観察した時に、ワクチンを接種したSLE患者さんの疾患活動性と再燃リスクは、接種していない患者さんと比べて有意に上昇しない事が明らかになりました。また、一般的に疾患活動性が高い患者さんがワクチンを接種すると疾患活動性が上昇する事が懸念されましたが、疾患活動性が高い患者さんに限定してもワクチン接種と疾患活動性の上昇との間に有意な関連性は見られませんでした。

本研究成果は、2022年8月12日に、科学雑誌「Lupus Science & Medicine」に掲載されました。

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本研究の概要図

研究者のコメント

「京大病院で膠原病の研究をしている吉田常恭です。外来診療をしていると全身性エリテマトーデスを罹患している患者さんが様々なワクチンの接種を忌避する事を経験します。それはワクチン接種によってもともとの症状の悪化を懸念しているためです。特に世界的に大流行する新型コロナウイルス感染症に関しては免疫抑制患者で重症化するリスクが言われ、さらにワクチン接種によって重症化予防効果が証明されているにも関わらず、この懸念は残存し、接種に対して不安に思う患者さんも少なくありませんでした。これが本研究を始めたきっかけでした。今回の結果がSLE患者さんの不安を少しでも取り除く事に繋がる事を期待しています。」(吉田常恭)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:吉田 常恭
研究者名:辻 英輝
研究者名:大西 輝

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