高齢者の1/3はパーキンソン病・レビー小体型認知症及びその予備群で、食道病変は重症度を反映する

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2020-11-05 東京都健康長寿医療センター,日本医療研究開発機構

発表内容の概要

東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンクは、パーキンソン病・レビー小体型認知症及びその予備群が高齢者剖検例の1/3を占め、食道病変が進行を反映し、重症度を予測できることを明らかにしました。本研究は、Springer Nature Group発行の国際科学雑誌「Acta Neuropathologica」に2020年11月5日オンラインにて発表される予定です。

研究の背景

神経細胞にとって大事な役割を果たすαシヌクレインタンパクが異常となりゴミとして蓄積され、レビー博士が1901年に発見したレビー小体(図1、右最上段)が形成されることで、パーキンソン病・レビー小体型認知症が発症します。認知症、神経難病のなかで、レビー小体は脳以外の全身にも出現することが知られています。

図1 高齢者の1/3に、レビー小体関連病理(左)がみられ、免疫染色(右)ではっきりと分かります。

東京都健康長寿医療センターは、在宅支援総合救急病院として、疾患の最初から最後まで患者に寄り添い、生活の質を高める努力をしてきました。高齢者ブレインバンクは、亡くなられた際に剖検診断による確定診断を行うことで最後の貢献をし、得られた組織リソースによる根治療法開発をめざし、事業運用されています。

高齢者の認知症・運動障害の原因を調べるため、高齢者ブレインバンクは連続開頭剖検例全例の脳・脊髄を含む全身をスクリーニングすることを行ってきました。レビー小体病は、リン酸化αシヌクレインを主とした異常なタンパク質が凝集して形成される、レビー小体や、それと関連した異常神経細胞突起(レビーニューライト)の出現を特徴とし、それを原因とする神経変性疾患群には、パーキンソン病やレビー小体型認知症、純粋型自律神経不全症などが含まれます。レビー小体病では、手足のふるえや体のこわばりといった運動症状に加えて、消化器症状を含む自律神経障害や睡眠障害などの多彩な非運動症状が現れます。このような非運動症状が運動症状に先行しうることが注目されていますが、病気の発症前の末梢神経系のレビー病理像や進行に伴う変化は不明でした。そこで、本研究グループは高齢者の連続開頭剖検例を対象に、消化器症状の原因と考えられる消化管神経系を中心に解析しました。

研究成果の概要

本研究は、2008年から2018年までの高齢者ブレインバンク518登録例を対象に行われました。死亡時年齢65歳以上、平均80歳の年齢層を対象としており、死因は本邦の死亡統計とほぼ一致しており、都市近郊在住高齢者を代表するとして良いと思います。末梢神経系(交感神経節、心臓、食道、副腎、皮膚)のレビー小体関連病理(レビー病理)の出現を、脳における拡がりと共に解析しました。その結果、①高齢者の1/3にレビー病理が見られること(図1)、②食道病変は病変の進行を最も反映し、食道壁内の固有筋層や外膜に多いこと(図2)、③食道レビー病理を有する高齢者では、自律神経症状が多いことを明らかにしました。

図2 食道壁内のレビー病理は病期を反映する

研究の意義

レビー小体及びその関連病理は高齢者の1/3に認められ、今後レビー小体病の非運動症状や消化器症状の病態解明及び治療法開発において、神経病理学的基礎になると考えられます。

助成金などの必要情報

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)脳科学研究戦略推進プログラム「臨床と基礎研究の連携強化による精神・神経疾患の克服(融合脳)」およびJSPS科研費新学術「コホート・生体リソース支援プラットフォーム」の助成を受けて行われました。

論文情報
タイトル
Lewy pathology of the esophagus correlates with the progression of Lewy body disease: a Japanese cohort study of autopsy cases
著者名
Tanei ZI, Saito Y, Ito S, et al.
掲載誌
Acta Neuropathologica, 2020., in press
お問い合わせ先

東京都健康長寿医療センター
神経病理学研究(高齢者ブレインバンク)
部長 齊藤祐子

AMED事業に関すること

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課

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