キネシン分子モーターKIF4 の遺伝子変異はてんかん発症の誘因となる

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2022-12-09 東京大学

1.発表者:
Wan Yuansong(東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻 特任研究員)
森川 桃 (研究当時:東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻 特任研究員/現:筑波大学医学医療系解剖学・神経科学研究室 日本学術振興会特別研究員SPD)
森川 真夏(東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻 特任研究員)
岩田 卓 (研究当時:東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻 特任研究員/現:筑波大学医学医療系解剖学・神経科学研究室 助教)
田中 庸介(東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻 講師)
廣川 信隆(東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻 特任研究員・名誉教授)

2.発表のポイント:
◆てんかんを持つ小児患者の遺伝子解析により、キネシン分子モーターKIF4 にアミノ酸置換をもたらす点突然変異が同定された。
◆Kif4 遺伝子変異マウスを作成して解析を行ったところ、変異型 KIF4 が核内で PARP1 と結合しその活性を抑えることで、細胞内の Cl-濃度が増加することがわかった。その結果、神経細胞の樹状突起の異常な分枝が引き起こされ、マウスのてんかん発症の頻度を高めた。
◆これはまったく新しいてんかん発症メカニズムであり、今後この Kif4 遺伝子変異マウスを用いることで、てんかんという神経難病の治療法開発が大きく進むことが期待される。

3.発表概要:
てんかんは最も一般的な神経疾患の一つであり、日本では約 100 万人(有病率は 1000 人に 8 人程度)、世界中では約 5,000 万人が罹患すると言われている。てんかんの発症には、神経の形態異常、細胞内外のミネラル動態異常、外傷、薬の副作用など、様々な要因があることが知られているが、その発症メカニズムの詳細については不明な点が多く残っていた。東京大学大学院医学系研究科の廣川信隆特任研究員、Wan Yuansong 特任研究員らは、キネシン分子モーターKIF4 の変異が、結合タンパク質 PARP1 の活性を抑制してしまうために、海馬の神経細胞における樹状突起分枝の異常な増加や、細胞内の Cl-イオン動態の障害などを引き起こし、マウスがてんかんになりやすくなることを発見した。本研究は、患者から同定された変異を導入したマウスの研究であり、キネシン分子モーターが関わる神経細胞の形態異常及び Cl-イオン動態異常による新しいてんかんの発症機構が解明されたことは、てんかんを含む神経疾患の治療に道を開くものである。本研究成果は、2022 年 12 月 8 日(米国東部標準時)に米国科学誌「Journal of Cell Biology」に掲載された。

詳しい資料は≫

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