GACDによる「世界各国のうつ病診療ガイドラインの開発と実装のプロセスに関する系統的レビュー」を公開

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2020-11-19 日本医療研究開発機構

ポイント
  • Global Alliance for Chronic Diseases(GACD)メンタルヘルスガイドラインワーキンググループが、世界各国のうつ病診療ガイドラインの開発と実装のプロセスに関する系統的レビューを行い、その成果はBulletin of the World Health Organizationの10月号で発表されました。
  • AMEDが2016年にGACDに加盟後、日本の研究者達(東京大学大学院医学研究科精神保健学教室の西大輔准教授と安間尚徳院生)がGACDワーキンググループに参加し、初めて国際的な横断的研究成果を発表しました。
  • 今回のレビューでは、世界的に見て、うつ病におけるガイドラインの実装は計画、報告、測定が不十分なため、低中所得国におけるガイドラインの開発と実装における格差を縮小することは優先課題であること、今後世界的にうつ病の解決に取り組むため、推奨事項を実装するための戦略を提示し、実施可能性、費用対効果、健康アウトカムへの影響を測定すべきことが示されました。
概要

東京大学大学院医学研究科精神保健学教室の西大輔准教授と安間尚徳院生らは、トロント大学のYena Lee院生とRoger McIntyre教授が率いるthe Global Alliance for Chronic Diseases(GACD)メンタルヘルスガイドラインワーキンググループに所属する、世界30か国、50人以上の研究者とともに、世界各国のうつ病診療ガイドラインの開発と実装のプロセスに関する系統的レビューを行いました。低中所得国のうつ病診療ガイドラインは、高所得国と比較して、ガイドラインの開発と実施のプロセスが不十分でした。研究グループは、今後はこの格差を是正する取り組みが必要であると結論づけました。本研究はWHOの機関誌Bulletin of the World Health Organizationの10月号に掲載されました。

1.背景

うつ病は世界中で増加傾向にあり、疾病負荷が大きいことが知られています。そのため、うつ病の改善、罹患率および死亡率の低減に効果的な診療ガイドラインに関する研究は重要です。トロント大学のYena Lee院生とRoger McIntyre教授が率いるGACDメンタルヘルスガイドラインワーキンググループは、大うつ病性障害と双極性感情障害に関するガイドラインの開発と実装の特徴を明らかにすることを目的とし、系統的レビューを行いました。また、高所得国(High Income Countries;HICs)と低中所得国(Low and Middle Income Countries;LMICs)のガイドラインを比較し、入手のしやすさや、作成プロセスの質を評価しました。

2.研究手法・成果

研究チームは、27の言語で83カ国から、82の国内および13の国際診療ガイドラインを特定しました。ガイドラインの作成プロセスと資金源は、高所得国(35/58;60%)と比較して、低中所得国(8/29;28%)では報告されている割合が高くありませんでした。

高所得国(22/58;38%)と比較して、低中所得国のガイドライン(2/29;7%)は、学際的な開発グループによって作成されている割合が高くありませんでした。有効性を比較検討する系統的レビューは、低中所得国のガイドライン(9/29;31%)と比べて、高所得国のガイドライン(41/58;71%)で実施されていました。低中所得国のガイドラインの10%(3/29)と高所得国のガイドラインの19%(11/58)だけが、質の指標または推奨事項の順守について評価する計画を記述していました。

世界的に見て、うつ病におけるガイドラインの実装は計画、報告、測定が不十分です。低中所得国におけるガイドラインの開発と実装における格差を縮小することは優先課題です。また、今後のガイドラインは、推奨事項を実装するための戦略を提示し、実施可能性、費用対効果、健康アウトカムへの影響を測定すべきと考えられます。

3.今後への期待

全世界で、うつ病の診療に効果的に取り組むためには、今後のガイドラインにおいて推奨事項を実装するための戦略や実装可能性、費用対効果、健康アウトカムへの影響の測定方法についての計画が示される必要があります。さらに、今後のガイドラインは専門家や当事者を含む様々な利害関係者が協働して作成されることが期待されます。

AMEDが2016年にGACDに加盟後、日本の研究者達が様々なGACDワーキンググループに参加し、国際的な研究活動に取り組んでいます。今後益々、GACD国際研究者ネットワークを通じた課題横断的な研究成果が導出されることが期待されます。

論文情報
雑誌名
Bulletin of the World Health Organization
論文名
Development and implementation of guidelines for the management of depression: a systematic review
著者名
Yena Lee, Elisa Brietzke, Bing Cao, Yan Chen, Outi Linnaranta, Rodrigo B Mansur, Paulina Cortes, Markus Kösters, Amna Majeed, Jocelyn K Tamura, Leanna M W Lui, Maj Vinberg, Jaakko Keinänen, Steve Kisely, Sadiq Naveed, Corrado Barbui, Gary Parker, Owolabi,Daisuke Nishi, JungGoo Lee, Manit Srisurapanont, Hartej Gill, Lan Guo,r Vicent Balanzá-Martínez, Timo Partonen, Willem A Nolen, Jae-Hon Lee, Ji Hwan Kim, Niels H Chavannes, Tatjana Ewais, Beatriz Atienza-Carbonell, Anna V Silven, Naonori Yasuma, Artyom Gil, Andrey Novikov, Cameron Lacey, Anke Versluis, Sofia von Malortie, Lai Fong Chan,ab Ahmed Waqas, Marianna Purgato, Jiska Joëlle Aardoom, Josefina T Ly-Uson, Kang Sim, Maria Tuineag, Rianne M J J van der Kleij, Sanne van Luenen,  Sirijit Suttajit, Tomas Hajek, Yu Wei Lee, Richard J Porter, Mohammad Alsuwaidan, Joshua D Rosenblat, Arun V Ravindran, Raymond W Lamak & Roger S McIntyrea on behalf of the Global Alliance for Chronic Diseases (GACD) Mental Health Guidelines Working Group
掲載情報
Bulletin of the World Health Organization 2020; 98:683-697H.
DOI
10.2471/BLT.20.251405.
URL
https://www.who.int/bulletin/volumes/98/10/20-251405/en/
研究助成金情報

本研究は、以下の資金の援助等を受けて行われました。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)地球規模保健課題解決推進のための研究事業における研究開発課題「Mental health promotion at workplace in low- and middle-income countries in Asia」(研究開発代表者:東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野川上憲人教授)

お問い合わせ先
研究内容に関すること

西大輔(にしだいすけ)
東京大学大学院 医学系研究科 精神保健学分野 准教授

事業に関すること

日本医療研究開発機構
国際戦略推進部 国際戦略推進課
地球規模保健課題解決推進のための研究事業

医療・健康
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