グリア細胞の操作によって記憶の形成と保持を調節した

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2021-01-12 東京大学


図:アストロサイトのcAMP上昇は神経細胞への乳酸供給を介して記憶の調節を誘導する

東京大学大学院薬学系研究科の小山隆太准教授と周至文研究員らの研究グループは、光に応じてアストロサイトのアデニル酸シクラーゼを活性化させる遺伝子改変マウスを用いて、アストロサイトのアデニル酸シクラーゼ活性化は記憶の形成と保持を調整することを示しました。
アストロサイトは、脳を構成する主要な細胞種の一つであり、脳の恒常性と機能を維持する役割を持っています。例えば、アストロサイトは記憶の形成に影響を及ぼすということが知られていました。しかしながら、その過程を制御するアストロサイト内のシグナル伝達は十分には明らかになっていませんでした。そのようなシグナル伝達が明らかになれば、神経細胞ではなく、アストロサイトを標的とした脳機能調節が可能になるかもしれません。
そこで、研究グループは、細胞内シグナル伝達に重要な分子であるcAMPに着目し、光刺激に応じて細胞内のcAMPレベルを増加させるアストロサイトを持つ新規遺伝子改変マウスを作製しました。 このマウスを利用することで、光刺激によるアストロサイトのcAMPの増加は、シナプス可塑性を誘導し、記憶を調節することを発見しました。 さらに、アストロサイトのcAMPの増加は、アストロサイトから神経細胞へのエネルギー供給を促進させることでシナプス可塑性と記憶の調節を誘導する可能性を示しました。
本研究は、シナプス可塑性と記憶におけるアストロサイトcAMPの重要性を示し、脳機能調節のためのストラタジーとして、神経細胞だけでなく、グリア細胞の役割に光を当てました。また、将来、生体内のアストロサイトの機能を調査するための新しい方法を提供しました。
詳しい資料は≫

論文情報

Zhiwen Zhou, Kazuki Okamoto, Junya Onodera, Toshimitsu Hiragi, Megumi Andoh, Masahito Ikawa, Kenji F. Tanaka, Yuji Ikegaya, Ryuta Koyama, “Astrocytic cAMP modulates memory via synaptic plasticity,” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America: 2021年1月11日

生物化学工学
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