「網膜色素上皮(RPE)不全症に対する同種iPS細胞由来RPE細胞懸濁液移植に関する臨床研究」について

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2021-01-20 神戸市立神戸アイセンター病院,日本医療研究開発機構

概要

神戸市立神戸アイセンター病院は、「網膜色素上皮(RPE)不全症に対する同種iPS細胞由来RPE細胞懸濁液移植に関する臨床研究」を計画してきましたが、本臨床研究について、令和3年1月20日に開催された厚生科学審議会再生医療等評価部会にて、了承されましたのでご報告いたします。

臨床研究の概要

実施内容

これまで本研究グループは、加齢による網膜色素上皮(RPE)細胞の異常が原因で、高齢の方に多い眼の病気のひとつである「滲出型加齢黄斑変性」の患者さんを対象に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製したRPE細胞(iPS細胞由来RPE細胞)を移植する新しい治療法の安全性の確認を主な目的とした臨床研究を行ってきました。

本研究グループが行った、自家iPS細胞(患者さんご自身の細胞から作成したiPS細胞)由来RPE細胞と同種iPS細胞(他人の細胞から作成したiPS細胞)由来RPE細胞に関する臨床研究において、腫瘍の発生や、他人の細胞を移植することによる免疫拒絶反応に対する安全性が一定の範囲で確認され、移植を受けた患者さんの視力も変わらずに保たれていることが示されました。今回の臨床研究では、加齢黄斑変性だけでなく、RPE細胞が変性したり、機能が落ちることで目が見えにくくなる様々な病気が含まれる網膜色素上皮(RPE)不全症の患者さんを対象に移植を行い、効果と安全性を調べていく予定です(RPE不全症については図1、RPE細胞移植については図2もご覧ください)。


図1 正常な眼の構造と網膜色素上皮不全症

私たちの目は、カメラととてもよく似た構造をしています。目の中に入ってきた光は、目の奥にある網膜で光から電気の信号に変換され、神経を伝わって脳まで届くことで、視覚(目が見える感覚のこと)として認識されます(図1:眼の構造を参照)。網膜は眼球内の後ろの方を覆う薄い膜で、何種類かの神経細胞が層状に重なった構造をしています。
その一番外側にあり、目の中に入ってきた光を受け取って、脳に伝えるための電気信号に変換する役割を持つのが、視細胞です。そして、その視細胞のすぐ外側に、視細胞を支えるように存在するのがRPE細胞です。
RPE細胞は、視細胞を保護する役目を持つ細胞です。視細胞に栄養を与えたり、老廃物を処理したりして、視細胞を元気に保つ働きがあります。私たちの視覚は、視細胞とRPE細胞が一緒に協力して働くことにより維持されています。
RPE不全症は、RPE細胞の遺伝子に異常があったり、近視がとても強かったり、加齢によるストレス、または炎症が起きたりすることでRPE細胞が働かなくなり、続いて、RPEに保護されなくなった視細胞も働かなくなるために、目が見えにくくなってしまう、いろいろな種類の病気が含まれています。
図2 RPE不全症に対するRPE細胞移植iPS細胞から作った健全なRPE細胞をバラバラの状態で含む液体であるRPE細胞懸濁液を、RPEが失われ薄くなった網膜の下に移植します。
患者さんの、RPE細胞が失われた部分に、移植したRPE細胞が生着し、視細胞が保護されます。

【研究計画】

今回の研究でも、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)で、免疫拒絶反応を起こしにくいタイプのHLA(ヒト白血球抗原)を持つ人の細胞から作製された同種iPS細胞をRPE細胞に変化させたものを使用します。そして、その細胞を含む液体である細胞懸濁液を患者さんの眼に移植します。

対象となる患者さんは、20歳以上の男女で、視力0.3以下、または視野検査において視野欠損が認められるRPE不全症に含まれる網膜変性疾患と診断されている方です。また、移植の前に患者さんのHLAが、移植する細胞のHLAと一致するかを調べる検査を行いますが、HLAが合わない場合でも、免疫抑制剤等を投与し、また拒絶反応が起きていないかを検査することで、研究に参加していただくことが可能です(拒絶反応の検査については図3をご覧ください)。

図3 拒絶反応の検査方法:リンパ球-グラフト免疫反応試験

RPE不全症にはとても稀な網膜の病気にかかっている患者さんも含まれることから、移植する細胞とHLAを一致させるのが困難となる可能性があります。そのため、HLAが一致しなくても、安全にRPE細胞移植が行われるように、定期的に拒絶反応リスク診断としてリンパ球-グラフト免疫反応試験(LGIR)を実施します。LGIRは本研究メンバーである杉田が確立した、拒絶反応のリスクを判定する方法です。患者さんから提供いただいた血液から免疫細胞を取り出して、培養皿で、移植するRPE細胞と同じ品質のRPE細胞と一緒に培養して、患者さんの免疫細胞の増殖や、拒絶反応に関わる物質の分泌を計測し、リスクを判定します。この検査方法は先の同種iPS細胞由来RPE細胞移植においても有用性が確認されており、本研究でも定期的に実施することで、RPE細胞移植の安全性を確保します。

目標症例数は50例、移植後の観察期間は4年間です。臨床研究の主な目的は、RPE不全症に含まれる病気のうち、どの病気にRPE細胞移植の効果が期待できるかを調べることと、移植の効果を調べるために行う検査について評価します。また、移植したRPE細胞が患者さんの眼の中で生着しRPE細胞としての機能を果たすかや、免疫拒絶反応などの安全性の評価も行います。

実施医療機関(再生医療等提供機関)は神戸市立神戸アイセンター病院で、理化学研究所で製造したRPE細胞を使って、神戸アイセンター病院網膜再生細胞手動調製室(fRRM)において、細胞懸濁液を作ります。なお、今回の臨床研究では、移植したRPE細胞が広い範囲で均一に生着しやすくなるように、移植方法の工夫として、細胞と一緒に移植する液体の改良と、手術が終わった直後から3時間、仰向けで安静にします。

実施体制

実施医療機関:地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立神戸アイセンター病院
研究責任医師:院長 栗本康夫

支援機関

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
事業名:「再生医療実用化研究事業」

これまでの経緯

令和2年11月12日 大阪大学第一特定認定再生医療等委員会にて承認
令和3年1月20日 厚生労働省厚生科学審議会再生医療等評価部会にて了承

本件に関するお問い合わせ先

研究に関すること・報道に関すること
地方独立行政法人神戸市民病院機構
神戸市立神戸アイセンター病院事務局経営管理課 山崎、小林

AMED事業に関すること
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
再生・細胞医療・遺伝子治療事業部 再生医療研究開発課

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