潜在的なシミをデジタル写真で計測する新手法~人工知能で肌の紫外線写真を生成して色素斑を計測~

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2021-02-09 東北大学大学院医学系研究科,東北大学病院,東北大学東北メディカル・メガバンク機構,日本医療研究開発機構

発表のポイント
  • 紫外線による肌ダメージは、皮膚発癌やシミの原因です。肌ダメージを自分自身で知ることは、皮膚発癌やシミの予防になります。
  • 肌ダメージを知るには、紫外線写真によって非侵襲的に評価する方法が有効ですが、そのための紫外線写真撮影装置は一般家庭には普及していません。また、病院・医院でも、限られた施設にしか備えられていません。
  • 一般の方々が肌ダメージを自分自身で確認出来るように、デジタルカメラで撮影されたカラー写真から人工知能技術を用いて高精度に紫外線写真を予測し、生成する手法を開発しました。
  • 専用の計測装置を用いなくとも、人工知能予測の紫外線写真を生成することで高精度な色素沈着の計測による肌ダメージ評価が可能となりました。
  • スマートフォン等で簡便に撮影されたデジタル写真から、肌ダメージの評価による日々のケアが可能となるため、予防医学に向けた利用が期待されます。
研究概要

蓄積された肉眼では見えない肌ダメージの非侵襲的な評価方法として、紫外線がメラニンに吸収される性質を利用した専用の紫外線写真撮影装置で計測する方法があります。しかし、紫外線写真撮影装置は皮膚科診療現場にも普及しておらず、一般のカラー写真から肌ダメージや色素沈着を計測する技術の開発が期待されていました。

東北大学医学系研究科皮膚科学分野の山﨑研志准教授、志藤光介医師、相場節也教授は東北大学東北メディカル・メガバンク機構の小島要講師、木下賢吾教授、田宮元教授と共同で、カラーデジタル写真から人工知能技術を用いて紫外線写真を予測し生成する手法を開発しました。これにより、通常のデジタルカメラにより撮影された写真から色素沈着を計測し、肌ダメージを評価することが可能となりました。この技術を活用すると、スマートフォン等を用いた日々の肌ダメージケアが可能となるため、予防医学に向けた利用が期待されます。

この成果は英国時間2021年1月13日に英国科学誌「Scientific Reports」の電子版に掲載されました。

研究内容

日光の暴露や加齢による肌ダメージは色素沈着やシワの原因となるだけでなく、日光角化症、扁平上皮がん、悪性黒色腫の発症リスクを上昇させるなど健康面においても重大な問題を引き起こすことが知られています。このため、日々のケアが重要となりますが、初期の色素沈着・色素病変を肉眼で捉えることは困難です。そこで、紫外線がメラニンに吸収され色素沈着が強調される性質を利用し、肌解析用の光源や紫外線センサーを有する計測装置により撮影された紫外線写真から潜在的な色素斑を含めて色素沈着を計測することが一般的に行われています。しかしながら、専用の計測装置を用いることで安定して高精度に色素沈着の計測・解析が可能である一方、それらの装置は一般的な皮膚科診療現場では設置されていない場合も多いです。このため、カラー写真から皮膚の色素沈着を計測する技術が求められていました。

本研究では、人工知能技術である条件付き敵対的生成ネットワークの枠組みのもと、多層の人工ニューロンから構成される深層学習モデルを学習することで、通常のデジタルカメラで撮影されたカラー写真から紫外線写真を予測し、生成する手法を開発しました。この敵対的生成ネットワークは、例えば画像データを対象とした場合、画像を生成する深層学習モデルと生成された画像が本物であるかを判別する深層学習モデルがお互いに競争しながら学習し精度向上することで、自然な合成画像の生成を可能とする技術です。本研究では、その中でもカラー写真を入力画像として条件付きで合成画像の生成を行う条件付き敵対的生成ネットワークを使用しています。また、深層学習モデルの学習データとして、東北大学病院皮膚科において専用の計測装置により撮影された150名の被験者のカラー写真と紫外線写真を使用しています。

図1bは専用の計測装置で撮影されたカラー写真(図1a)から本研究の開発手法により生成された合成紫外線写真です。実際の紫外線写真(図1c)と同様に、黄色の円で囲まれた色素沈着のようなカラー写真では捉えることが困難な初期の色素斑も強調されていることが分かります。なお、同被験者は学習データとして写真が使用された150人の被験者には含まれていません。また、同被験者からは本研究を発表した論文ならびに本文書での顔写真の使用について承諾を得ています。同被験者の写真に対して、頬の部分について色素沈着の自動検出を行った結果、図2a、bのように合成紫外線写真と実際の紫外線写真で同様の色素沈着パターンが検出されました。さらに、同被験者を含む学習データに写真が含まれていない24名の被験者について、合成紫外線写真と実際の紫外線写真で計測された色素沈着の割合の評価を行いました。その結果、両者は相関係数0.92と強く相関しており(図2c)、色素沈着の自動検出を通して肌ダメージの経時的変化を客観的に評価することが可能であることが分かりました。


図1. a.専用の計測装置により撮影されたカラー写真。 b.本研究の開発手法によりカラー写真から生成された紫外線写真。 c.専用の計測装置により撮影された実際の紫外線写真。
図2. a.実際の紫外線写真から自動検出された頬の色素沈着。 b.本研究の開発手法により生成された合成紫外線写真から自動検出された頬の色素沈着。 c.合成紫外線写真と実際の紫外線写真において自動検出された頬の色素沈着の割合の比較。


上記の評価では専用の計測装置で撮影されたカラー写真が用いられていますが、図3a、bのように異なる環境下においてスマートフォンにより撮影されたカラー写真についても本研究の開発手法により合成紫外線写真(図3c、d)を生成し、評価を行いました。その結果、黄色の円で囲まれた色素沈着のように元のカラー写真からは捉えることが困難な色素沈着の識別が可能となることが分かりました。


図3. a.スマートフォンにより撮影された右横顔のカラー写真。 b.スマートフォンにより撮影された左横顔のカラー写真。 c.本研究の開発手法により右横顔のカラー写真から生成された合成紫外線写真。 d.本研究の開発手法により左横顔のカラー写真から生成された合成紫外線写真。


本研究の開発手法により、専用の計測装置がない環境においても通常のデジタルカメラにより撮影されたカラー写真から潜在的な色素斑を含めた色素沈着の計測による肌ダメージの評価が可能となりました。今後、より撮影環境に頑健な手法の開発とスマートフォンで利用可能なアプリケーションの開発を進めることで、色素沈着の計測を通した日常的な肌ダメージの評価による予防医学に向けた利用が期待されます。

支援

本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金、国立研究開発法人日本医療研究開発機構臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業の支援を受けて行われました。

論文題目
English Title
Facial UV photo imaging for skin pigmentation assessment using conditional generative adversarial networks
日本語タイトル
条件付き敵対的生成ネットワークを用いた紫外線写真生成による皮膚の色素沈着評価
著者
小島要、志藤光介、田宮元、山﨑研志、木下賢吾、相場節也
掲載誌
Scientific Reports
DOI
10.1038/s41598-020-79995-4
お問い合わせ先

研究に関すること
東北大学大学院医学系研究科 皮膚科学分野
教授 相場節也(あいばせつや)
准教授 山﨑研志(やまさきけんし)

取材に関すること
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室

本事業の問い合わせ先
日本医療研究開発機構
ゲノム・データ基盤事業部 健康・医療データ研究開発課

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