2021-02-17 京都大学
堀江貴裕 医学研究科助教、尾野亘 同准教授らの研究グループは、脳内のマイクロRNA-33が適応熱産生に重要であることを世界で初めて見出しました。
褐色脂肪細胞は脂肪を分解し、熱を産生することで体温の維持をします。そしてこの褐色脂肪細胞の機能低下や数の減少が、生活習慣病やメタボリックシンドロームの原因になることが分かってきました。
今回、本研究グループは、視床下部のマイクロRNA(miRNA, miR)-33に注目し、これが寒冷刺激の際に交感神経活性化を介して、体温維持に働くことを示しました。miR-33を持たないマウス(miR-33KOマウス)を調べた結果、褐色脂肪細胞の熱産生機能が弱まり、冷たい刺激にさらされた時に体温を維持できなくなっていました。また、このマウスは、エネルギー消費が少なく肥満になりやすいこともわかりました。寒冷刺激により視床下部のmiR-33の量が増加するので、miR-33は交感神経活性の程度を変化させるスイッチとして働いて熱産生を介して、全身の代謝を調節していると考えられました。
今回の研究で、褐色脂肪細胞による熱産生機能の生理学的メカニズムの一端を解明することができました。褐色脂肪細胞の活性化はエネルギー消費を促すことから、メタボリックシンドロームの治療や、肥満改善のターゲットとして今後ますます注目されると考えられます。
本研究成果は、2021年2月16日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
図:本研究の概要図
研究者情報
研究者名:堀江貴裕
研究者名:尾野亘