女性は「かゆみ」に敏感? ~女性ホルモンの変動により「かゆみ」の感じ方が変わるしくみを解明~

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2021-07-27 国立遺伝学研究所

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妊娠中や更年期などの女性ホルモンが変動する時期に、女性では「かゆみ」の感じやすさが変わることが知られています。しかしながら、かゆみの感じやすさが変わる原因はよくわかっていませんでした。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の高浪景子助教(前:岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所)と岡山大学、京都府立医科大学、富山大学、佛教大学、カリフォルニア大学デイビス校の国際研究チームは、ラットを用いて「かゆみ」の感じ方が変わるしくみの解明に取り組みました。

まず、実験的に女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンの濃度を変動させた雌ラットで、人為的にかゆみを誘発させました。すると、かゆみ感覚の指標になる「引っ掻き行動」がエストロゲンの存在と関係することがわかりました。次に、エストロゲンが「かゆみ情報」をどのような神経伝達機構を介して皮膚から脳へ伝えるのか調べました。その結果、エストロゲンが脊髄において「ガストリン放出ペプチド(GRP)受容体」神経を活性化することで引っ掻き行動を制御することが分かりました(図)。本成果によって、女性ホルモンのエストロゲンが脊髄のGRP受容体を介して、かゆみの感じ方を変えていることを世界で初めて明らかにしたのです。

本研究成果は女性のかゆみ疾患の原因解明と治療法の開発に寄与することが期待されます。

本研究は文部科学省の科研費(高浪景子:研究活動スタート支援22800053, 若手研究(B) 26870496, 特別研究員奨励費15J40220, 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)15KK0343, 基盤研究(C)19K06475、歌大介:基盤研究(C)15K08667)、JST A-STEP(高浪景子:AS242Z02632Q)、多様な生物・戦略による研究直結型教育のグローバル共同利用拠点(岡山大学・牛窓臨海)、女性研究者支援制度(京都府立医科大学、岡山大学、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所)の支援により遂行されました。

本研究成果は、米国科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に2021年7月27日午前4時(日本時間)に掲載されました。

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図: エストロゲンが脊髄のガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)発現神経を介して、「かゆみ」を強める。

Estrogens influence female itch sensitivity via the spinal gastrin-releasing peptide receptor neurons

K. Takanami*, D. Uta, K. Matsuda, M. Kawata, E. Carstens, T. Sakamoto, and H. Sakamoto
*Corresponding author(責任著者)

PNAS 118, e2103536118 (2021) DOI:10.1073/pnas.2103536118

詳しい資料は≫

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生物化学工学
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