ソフトバンクが国立循環器病研究センター内のオープンイノベーションラボに研究室を開設
2021-03-30 国立循環器病研究センター,ソフトバンク株式会社
国立研究開発法人国立循環器病研究センター(所在地:大阪府吹田市、理事長:小川 久雄、以下「国循」)とソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮内 謙、以下「ソフトバンク」)は、国民の健康寿命の延伸や医療費抑制に貢献するため、両者が2019年に締結した包括連携協定※1の一環として、AI(人工知能)を活用した冠動脈疾患の診断支援およびリスク予測に関する研究開発(以下「本研究」)※2を開始しましたので、お知らせします。
本研究は、国循の野口 暉夫 副院長および岩永 善高 副循環器病統合情報センター長の指揮の下、AIを活用して画像検査結果などから冠動脈疾患の診断支援や重症化リスクなどの予測の実現を目指すものです。また本研究では、冠動脈疾患の発症や進展などに影響を与えるとされる性差に着目することで、より精度の高い診断支援およびリスク予測に貢献することを目的としています。
なお、本研究はソフトバンクが国循内のオープンイノベーションラボ(以下「OIL」)※3に、2021年1月に開設した研究室を拠点として進めていきます。
1.背景
冠動脈疾患(代表例:狭心症、急性心筋梗塞)は、日本において主な死因の一つとされる重大な疾患であり、健康寿命の延伸や医療費抑制のためには、適切なタイミングで正しい診断と処置を行うことが極めて重要とされています。冠動脈疾患の診断・リスク予測では、CT検査などの画像検査を通して、疾患の原因となる冠動脈の狭窄※4などを診ることが有効とされていますが、診断・リスク予測の基準には、男女間で差があることが従来の研究で明らかになっており、冠動脈疾患への対策強化において性差に関する研究の重要性が高まっています。
2. 本研究の概要
本研究では、これまで野口副院長主導の下で進められてきた、冠動脈疾患の性差や予防に関する研究(「なでしこ研究」)※5のデータを、AIを活用して分析することで独自のアルゴリズムを開発し、画像検査結果などから性差を加味した、より精緻な診断支援や重症化リスクなどの予測の実現を目指します。国循とソフトバンクの両者は、本研究が日本における性差医療(Gender-Specific Medicine)の普及の一助となることに期待しています。
国循は、国循を中心に行ってきた多施設共同観察研究「なでしこ研究」における臨床データおよび画像データを基にした研究を推進してきました。本研究を通して、冠動脈疾患における性差に関しての知見を解明してきた「なでしこ研究」から、性差を加味した精緻かつ簡便な診断、予後予測※6の方法を明らかにしていくことで、冠動脈疾患の診療に役立てるだけでなく、冠動脈疾患発症予防への応用により広く社会への貢献を目指します。
ソフトバンクは、主にAIおよびデータ学習の分野における知見を生かして、本研究に参画します。具体的には、AIを活用して「なでしこ研究」で収集されたデータを分析し※7、冠動脈疾患の診断支援や重症化リスクなどの予測に資するアルゴリズムの開発を行います。また、将来的にはそのアルゴリズムを活用し、医師の診断を支援するアプリケーションなどを開発することを検討していきます。
国循とソフトバンクは両者の強みを生かして、さらなる国民の健康寿命の延伸や医療費抑制に貢献することを目指します。
※1 詳細は、2019年9月25日付プレスリリース「国立循環器病研究センターとソフトバンク、循環器病対策の先端医療の研究開発で協力」(https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2019/20190925_01/)をご覧ください。
※2 本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けています。
※3 国循と協働する研究拠点を一つ屋根の下に実現したオープンイノベーションラボ(OIL)では、民間企業や大学などの外部機関が、国循の研究実績を生かして、循環器疾患領域をはじめ健康維持・増進に関する幅広い分野において共同研究などを行っています。
※4 心臓を取り巻く冠動脈の内壁に徐々に沈着したコレステロール(脂肪)などが、血管の内腔を狭めている状態。
※5 動脈硬化性疾患の危険因子の性差と予防に関する多施設共同前向きコホート研究の略称。詳細は、こちら(http://nadesico.ncvc.go.jp/)をご覧ください。
※6 患者の病状が今後どのように変化するか予測を行うこと。
※7 当該データは、国循の情報セキュリティーポリシーに基づき、適切に取り扱います。また、ソフトバンクはOIL研究員・研究協力員として本研究に参画し、データ分析を行う予定です。