2021-04-09 医薬基盤・健康・栄養研究所
この度、弊所 招へいプロジェクトリーダーの石井優(大阪大学大学院医学系研究科 免疫細胞生物学 教授)、大阪大学大学院医学系研究科 特任研究員の森本彬人及び、准教授の菊田順一らの研究グループは、副甲状腺ホルモン(PTH)による骨量増加のメカニズムを明らかにしました。
体の骨は、骨を作る骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞が協調して働き、骨の再構築(骨リモデリング※)を生涯にわたって繰り返すことでその強度を維持しており、様々なホルモンや薬剤によりそのバランスが調節されます。PTHには、骨吸収を促して血中にカルシウムなどのミネラルを供給する他に、骨吸収から骨形成への移行を促して骨を修復する作用があります。しかし、PTHが骨芽細胞と破骨細胞を協調的に制御する分子メカニズムについて、これまでその詳細な機序は明らかにされてきませんでした。
骨形成と骨吸収を協調的に制御する新規分子SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)を発見したことにより、今後、骨粗しょう症などの骨疾患の治療により効果的な治療薬開発の進展につながることが期待されます。
なお、本研究成果は、国立医療研究開発機構(AMED)の先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業における「生体組織イメージングに基づいたバイオ医薬品の新規評価基盤技術の開発」(研究代表者:石井優)の一環として得られ、その成果は、英国科学誌「Nature Communications誌」に、4月9日(金)午後6時(日本時間)に公開されます。
※用語解説
骨リモデリング:体の骨は、骨芽細胞による新しい骨の形成(骨形成)と、破骨細胞による古い骨の破壊(骨吸収)が繰り返されて、骨量が維持されている。この仕組みを骨リモデリングという。