2021-04-15 国立成育医療研究センター
国立成育医療研究センター 研究所 社会医学研究部の加藤承彦室長らの研究グループは、体外受精などの高度不妊治療を受ける女性約500名を対象とした疫学調査のデータを用いて、治療開始初期(主にこれから治療を開始する方、採卵2回までの方)の調査参加者のメンタルヘルスやQuality of life(QOL:生活の質)の状況を分析しました。
その結果、軽度以上の抑うつ症状ありと判定された調査参加者の割合は、54%でした。また、不安が高まっている状況と判定された割合も、39%と高い割合となっていました。Quality of lifeの状況を評価する尺度でも、社会生活機能や日常役割機能(精神)、心の健康の低下の傾向が見られました。特に、年齢が20歳代の参加者でメンタルヘルスの不調やQOL低下の傾向が顕著でした。
本研究の結果、海外先進国における知見と同様に、日本においても高度不妊治療を受ける女性の心の健康状態が悪化している可能性が明らかになりました。現在、不妊治療における経済的側面への支援(保険適用)に関する議論が進んでいますが、不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスに関しても支援が必要であることが示唆されました。
抑うつ症状(参加者約500名)
プレスリリースのポイント
- 体外受精等の高度不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスを対象とした日本で唯一の疫学調査です
- 治療初期の段階にもかかわらず、軽度以上の抑うつ症状ありの割合が54%
- 同時に、不安の高まりやQOLの低下が見られました
- 年齢が20代の調査参加者で特にメンタルヘルスが悪い傾向が見られました
発表論文情報
【著者】加藤承彦1)、三瓶舞紀子1)、齊藤和毅2)、森崎菜穂1)、浦山ケビン1)
【所属】1)国立成育医療研究センター研究所社会医学研究部 2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
【題名】Depressive symptoms, anxiety, and quality of life among Japanese women at initiation of Assisted Reproductive Technology treatment.
【掲載誌】Scientific Reports (2021)