より安全に誰もが新型コロナワクチンを接種できる仕組みづくりを支える

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2021-06-01 国際協力機構

世界中で未だ猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向け、切り札とされるのが、ワクチンの接種です。地球規模での封じ込めには、先進国、そして途上国にも分け隔てなく、公平にワクチンが行き渡ることが不可欠。そのため、日本は、ワクチンを共同出資・購入して途上国での接種を後押しするため、日本を含む180以上の国・地域が参加する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」と連携して、途上国でのワクチン接種の普及に協力しています。

6月2日にオンライン形式で開催される「COVAXワクチンサミット」では、ワクチンへの公平なアクセスの確保・普及に向け、さらなる資金拠出などについて各国が議論を交わします。

JICAは長年、途上国の保健衛生分野で協力を続けるなか、ポリオなどのワクチンの接種体制の強化や、途上国が自らワクチンを開発・製造できるような取り組みを支えてきました。培ってきたそのような経験をもとに、より確実に、途上国の人々のもとに新型コロナワクチンが届く体制づくりの協力にも着手しています。

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JICAのこれまでの協力から、パキスタンで予防接種の担い手として実技研修を受ける女性たち(左)と、麻しんワクチンを製造するベトナム人技術者ら(右)

現場の声を丁寧に拾い、底支えする—JICAの協力の強みを発揮

「ワクチンが入手できればいい、というわけではないのです。どういう体制で誰が打つのか、そのプロセスはどう構築するのか、そのために行政側はどんな準備をしなければいけないのか、すべての人々がワクチンを接種できるようにするには、その仕組みづくりが重要です」

そう語るのは、JICA人間開発部で感染症対策への協力をとりまとめる保健第二チーム課長小野智子さんです。たとえ、ワクチンが途上国に公平に分配されたとしても、接種体制ができていなければ意味がありません。日本でもワクチンを打つ医師や看護師の確保、また、ワクチン接種の予約方法を巡り手探りの状況が続くなど、スムーズにワクチンが接種できる体制づくりには次々と課題が生じます。

子どもから大人まで広い世代で感染が国境を超えて爆発的に広がる新型コロナウイルス感染症への対策は、先進国でも試行錯誤ですが、施設や情報が十分ではない途上国にとっては、さらなる挑戦となっています。そのような中、JICAではこれまで保健分野での行政能力の強化などに向け協力してきたことをもとに途上国での取り組み支えています。「長期的な視野に立ち、現地の行政官・人々と直接コミュニケーションを取りながら現場で活動し、生の声を拾う。そして、現場の課題をしっかり把握して、細かい所にも目を配り、底支えできることこそ、JICAの強みです」と小野さんは言葉に力を込めます。

脆弱な保健行政だけでなく、病院といった保健インフラの未整備など課題も山積しています。JICAは、新型コロナワクチン接種の普及を促すため、途上国でワクチンを運ぶためのコールドチェーン(低温物流)の機材整備といった物理的な協力に加え、機材の保守等関連する人材育成も8ヵ国を皮切りに進めています。水や電気が安定しない場所では、ワクチンを保管するために太陽光を電源とする冷蔵庫を整備するなど、その国のニーズに合わせた体制づくりをサポートします。

さらに、ベトナムでは、約20年にわたる麻しんワクチンの製造・開発への協力もベースとなって、現地で新型コロナワクチン開発が進められており、パキスタンの定期予防接種強化に対するこれまでの協力は、円滑なワクチン接種体制の基盤づくりにも貢献しています。

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ポストコロナを見据え、持続的な感染症予防対策に向けて

「マラリア、HIV/エイズをはじめ、未だ有効なワクチンが開発されていない感染症が多くあります。新型コロナウイルスのワクチンが、発生から1年足らずという早さで開発されたのは実はものすごく稀なケースです」

先進国をはじめとする世界的な感染拡大とその脅威の大きさから、短期間に投資がされ、ワクチン開発が進んだという側面があると小野さんは述べます。効力のあるワクチンは感染症対策の特効薬ではあるものの、新型コロナも今後、変異し、現在のワクチンが効力を持たなくなる可能性もあります。さまざまな形で発生する新興・再興感染症に立ち向かうには、ワクチンだけでない予防の体制を整えることが課題。世界中でこれまで撲滅された感染症は天然痘だけです。

そのため、小野さんは、「この先、新型コロナが収束したとしても、この経験を過ぎ去ったことにせず、いかに今後の感染症予防に活かしていくか、ポストコロナを視野にいれた能力強化をしていくことが、今後、JICAに課せられています」と強調します。

国によっては、ワクチンへの信頼度が低く、接種が進まないこともあり、安全で効力のあるワクチン接種に向けた啓発も必要です。感染症を早く発見するための検査体制の確立、治療に向けた専門的な治療技術の取得など、途上国が自立して、持続的な感染症予防・治療対策を講じることができるようになるには時間がかかり、息の長い協力も必要です。

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ガーナにある野口記念医学研究所で実施された西アフリカ諸国を対象にした感染症対策のための実験能力強化研修

つい数日前に、アフリカ・モザンビークから帰国したばかりと言う小野さんは、現地の病院整備に向け、協議を進めてきました。国ごとに異なるニーズをくみ取るため、現場の声に丁寧に耳を傾け、課題を引き出し、解決策を探る—そんな取り組みがこれからも続きます。

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