細胞シグナルを精密に制御する、スマートな人工細胞増殖因子の開発に成功

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低副作用の再生医療の実現に貢献する分子技術

2021 08-02 東京大学,理化学研究所,科学技術振興機構,日本医療研究開発機構

細胞シグナルを精密に制御する、スマートな人工細胞増殖因子の開発に成功

ポイント
  • 組織の再生や保護、幹細胞の増殖や分化などに関与する「細胞増殖因子」の機能に着目し、その生理活性を任意の強度で再現する合成化合物の開発に成功しました。
  • 上記の機能を持つ「スマートな人工細胞増殖因子」を、生体成分であるデオキシリボ核酸(DNA)に基づいて合理的に設計可能であることを初めて報告しました。
  • 細胞増殖因子の異常な活性化は発がん・浮腫などの副作用を引き起こす可能性があるため、本技術は低副作用の再生医療の実現に貢献する新たな分子技術として期待されます。

細胞増殖因子は、組織の再生や保護、幹細胞の増殖や分化に関与するたんぱく質であり、再生医療等製品やES/iPS細胞の培養因子として広く応用されています。しかし、細胞増殖因子がもたらす細胞シグナル伝達は、異常な活性化により発がん・浮腫などの副作用を示す可能性があることが知られ、再生医療等製品としての応用を妨げる一因となっていました。

今回、東京大学 大学院工学系研究科の秋山 桃子 博士課程大学院生、植木 亮介 助教、山東 信介 教授、理化学研究所 開拓研究本部の柳川 正隆 研究員、佐甲 靖志 主任研究員らの共同研究グループは、増殖因子の生理活性を任意の強度で再現するスマートな人工細胞増殖因子の開発に成功しました。本分子は、生体物質であるデオキシリボ核酸(DNA)から構成されており、低コストで化学的に合成することが可能です。本技術は、合理的な制御が難しかった細胞増殖因子の機能を、望みのまま制御する新たな手法を提供するもので、将来的に低副作用の再生医療の実現に貢献する分子技術として期待されます。

本研究成果は、2021年7月29日付でワイリードイツ法人(Wiley-VCH)が出版する科学誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン版が掲載されました。

本研究は、上原記念生命科学財団、日本医療研究開発機構 創薬基盤推進研究事業、日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究、科学技術振興機構 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 産学共同(育成型)、野口遵財団の支援を受けて実施されました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“DNA-based Synthetic Growth Factor Surrogates with Fine-tuned Agonism”
DOI:10.1002/anie.202105314
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
植木 亮介(ウエキ リョウスケ)
東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 助教

山東 信介(サンドウ シンスケ)
東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 教授

<JST事業に関すること>
星 潤一(ホシ ジュンイチ)
科学技術振興機構 産学連携展開部 研究支援グループ

<AMED事業に関すること>
日本医療研究開発機構 創薬事業部 医薬品研究開発課

<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
理化学研究所 広報室 報道担当
科学技術振興機構 広報課

細胞遺伝子工学
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