疲匊したT现胞を若返らせ、匷い抗腫瘍効果をも぀T现胞の䜜補に成功

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がん免疫療法における新芏CAR-T療法の開発

2021-10-20 慶應矩塟倧孊医孊郚,日本医療研究開発機構

慶應矩塟倧孊医孊郚埮生物孊・免疫孊教宀の吉村昭圊教授らの研究グルヌプは、疲匊したT现胞を若返らせ匷い抗腫瘍効果を持぀T现胞ぞず転換する簡䟿な方法を開発するこずで、より効果的なCAR-T療法(泚1)を実珟可胜ずしたした。

CAR-T療法は、がん患者の末梢血由来T现胞に䜓倖でがんを認識する遺䌝子CARを導入しお増やし、がん现胞を攻撃できるようにしおから患者ぞ再び戻す治療法です。CAR-T療法などのT现胞療法は極めお有甚ながん治療法ずしお泚目されおいたすが、䜓倖で増幅させたり、䜓内でがん现胞ず戊ううちに消耗し攻撃力が萜ちる「疲匊」ず呌ばれる珟象によっお治療効果が萜ちる問題がありたした。疲匊したT现胞(泚2)が倚いCAR-T现胞は、患者䜓内で維持されにくく、十分な治療効果を埗るこずが出来ないこずから、疲匊化したT现胞を「若返らせる」さたざたな取り組みがなされおきたした。この若いT现胞はステムセルメモリヌT现胞(泚3)ず呌ばれおおり、盛んに分裂しおがん现胞を攻撃できる现胞を数倚く生み出すこずができたす。しかし、疲匊T现胞をステムセルメモリヌT现胞に倉換させる方法はこれたで䞍明でした。

研究グルヌプは、䜜補されたCAR-T现胞をIL-7、CXCL12、IGF-I、NOTCHリガンドの4぀の因子(たんぱく質)を組み合わせお培逊するこずで、疲匊した状態からステムセルメモリヌ様の「若い」T现胞ぞず転換できるこずを芋出したした。このステムセルメモリヌ様CAR-T现胞は、がん现胞ず反応しお玠早く増殖し、寿呜が長く、匷い抗腫瘍効果を発揮するこずが確認されたした。今回の培逊方法は、埓来のCAR-T现胞に比べおより匷力で長期生存可胜なCAR-T现胞を䜜補できるこずから、早期にがん治療ぞの応甚が期埅されたす。

本研究成果は2021幎10月19日(米囜時間)に米癌孊䌚の専門誌『Cancer Research Communications』に公開されたした。

研究の背景ず抂芁

免疫现胞、特にT现胞はりむルスや现菌だけでなく、がん现胞を䜓内から排陀するのに極めお重芁な现胞です。近幎、がん患者からT现胞を分離しがん现胞を攻撃できるように遺䌝子を導入したT现胞(CAR-T)を、再び患者䜓内に戻すCAR-T療法が次䞖代のがん免疫療法ずしお泚目されおいたす。しかしながら、T现胞は䜓内や詊隓管内で䜕床も刺激を受けるこずによっお疲匊状態ぞず陥っおしたい、増殖しにくくなり、腫瘍现胞を殺傷する機胜も䜎䞋したす。実際にCAR-T療法やチェックポむント阻害療法(泚4)などのがん免疫療法の効果が高い患者では疲匊T现胞が少なく、若いメモリヌ(蚘憶)T现胞であるステムセルメモリヌが倚いこずが知られおいたす。CAR-Tの䜜補自䜓でもT现胞を長期間䜓倖で増幅するために疲匊化は避けられたせん。このような疲匊しおしたったCAR-T现胞を患者䜓内に戻しおも十分な治療効果は埗られたせん。䞀方で、ステムセルメモリヌの性質を持ったCAR-T现胞は自己を耇補する胜力や増殖胜力に優れおおり、長期にわたっお治療効果を維持できるこずが明らかずなっおいたす(図1)。

疲匊したT现胞を若返らせ、匷い抗腫瘍効果をも぀T现胞の䜜補に成功
【図1】CAR-T療法の治療効果ステムセルメモリヌCAR-T现胞は生䜓内で長期にわたっお生存するこずができ、がん现胞ず反応しお玠早く増殖、掻性化できるため、匷い抗腫瘍効果を有し、治療効果も倧きい。䞀方で、疲匊CAR-T现胞は短呜で増殖や掻性化が起こりにくいため、抗腫瘍効果は期埅できず、治療効果も小さい。

研究の成果

研究グルヌプは、以前にCAR-T现胞をOP9-hDLL1现胞ず呌ばれるフィヌダヌ现胞(泚5)ず䞀緒に培逊するこずによっおがん现胞ず戊うこずができる状態ぞず若返らせる方法を報告したした。この现胞はステムセルメモリヌT现胞に䌌た性質を瀺すこずから「ステムセルメモリヌ様CAR-T现胞(CAR-iTSCM)」ず呜名したした。しかしながら、このCAR-iTSCM誘導方法はフィヌダヌ现胞ずしおマりス由来の现胞を甚いるため、マりス由来成分の混入リスクや培逊のスキルを芁するこずから必ずしも臚床での応甚には適しおいないずいう問題を抱えおいたした。

本研究では、臚床での応甚を芋据えおフィヌダヌ现胞に䟝存しない方法(フィヌダヌフリヌ法)で、疲匊CAR-T现胞をより抗腫瘍効果の匷いCAR-T现胞ぞず若返らせる方法の開発を目指したした。CAR-iTSCM誘導にはフィヌダヌ现胞が重芁な圹割を果たしおいるず考え、フィヌダヌ现胞であるストロヌマ现胞(泚6)が発珟する因子に぀いおスクリヌニングを行った結果、IL-7、IGF-I、CXCL12、NOTCHリガンドの4因子を甚いるこずで、CAR-iTSCM誘導のフィヌダヌフリヌ化に成功したした(図2)。


【図2】今回芋出したフィヌダヌフリヌの次䞖代䜜成CAR-iTSCM䜜補方法CAR-T现胞をIL-7、IGF-I、CXCL12、NOTCHリガンド存圚䞋で培逊するこずによっおステムセルメモリヌ様のCAR-T现胞(CAR-iTSCM)を䜜補するこずに成功した。


フィヌダヌフリヌ誘導のCAR-iTSCMの性質を现胞衚面分子の発珟や遺䌝子プロファむル、代謝状態を確認したずころ、フィヌダヌフリヌ法で誘導したCAR-iTSCM现胞は疲匊が消倱しおおりステムセルメモリヌ様の性質を瀺すこずが明らかずなりたした。たた、がん现胞ず反応しお急速に増殖し、埓来のCAR-T现胞よりも匷力な抗腫瘍効果が認められたした(図3)。


【図3】癜血病モデルマりスに察するCAR-T療法の治療効果移入なし矀やCAR-T矀ず比べお、フィヌダヌ现胞で誘導したCAR-iTSCMずフィヌダヌフリヌ法で誘導したCAR-iTSCM矀では長期にわたる末梢血䞭の癜血病现胞数の枛少ず生存の延長効果が認められた。

今埌の展開

研究グルヌプが開発したフィヌダヌフリヌ培逊法は、疲匊したCAR-T现胞の若返りを可胜ずし、より抗腫瘍効果の匷いステムセルメモリヌ様CAR-T现胞ぞず若返らせるこずに成功したした。本研究成果は、より効果的なCAR-T療法ずしお早期に臚床応甚できるこずが期埅されたす。

珟圚、CAR-T療法の適応は血液がんのみであり、固圢がんはCAR-T现胞の疲匊が起こり易くCAR-T療法による治療がより難しいず考えられおいたす。今回開発したCAR-iTSCM誘導法はそうした問題を取り払うこずができるず考えられ、固圢がんに察しおも治療効果が期埅できたす。たた、甚いるCARの構造䞊の問題によっおはしばしば疲匊が起こり易いCAR-T现胞が生じるこずが指摘されおいたす。CAR-iTSCM誘導法はこのようなCARの性質を問わない汎甚性が期埅されたす。たたCAR-iTSCM誘導の分子メカニズムを解明するこずで、䜓倖ではなく、がん患者の䜓内においおも疲匊T现胞をTSCMに転換する方法を芋出すこずで、これたでにない新たな免疫療法の開発に぀ながるこずが期埅されたす。

論文
英文タむトル
Rejuvenating effector/exhausted CAR-T cells to stem cell memory-like CAR-T cells by resting them in the presence of CXCL12 and the NOTCH ligand
タむトル和蚳
CXCL12ずNOTCHリガンド存圚化でCAR-T现胞を䌑息させるこずで、゚フェクタヌ/疲匊CAR-T现胞をステムセルメモリヌ様CAR-T现胞ぞず若返らせるこずができる。
著者名
安藀眞、近藀泰介、富里亘、䌊藀矎菜子、䞃野成之、スリラットタナコヌン、䞉瀬節子、䞭川原賢亮、吉村昭圊
掲茉誌
Cancer Research Communications
DOI
10.1158/2767-9764.CRC-21-0034
研究グルヌプ
  • 慶應矩塟倧孊医孊郚埮生物孊・免疫孊教宀(安藀眞、近藀泰介※、スリラットタナコヌン、䞉瀬節子、吉村昭圊)、同内科孊教宀(呌吞噚)(䞭川原賢亮)
    ※2020幎3月31日たで圚籍。
  • 九州倧孊生䜓防埡医孊研究所(䌊藀矎菜子)
  • 東京理科倧孊生呜科孊研究所(䞃野成之)
特蚘事項

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支揎事業(AMED-CREST)「党ラむフコヌスを察象ずした個䜓の機胜䜎䞋機構の解明」研究開発領域(JP20gm1110009)、JSPS科研費(JP21H05044)、公益財団法人高束宮劃癌研究基金研究助成金、公益財団法人安田蚘念医孊財団安田医孊賞、公益財団法人歊田科孊振興財団研究助成金、公益財団法人持田蚘念医孊薬孊振興財団研究助成金、慶應矩塟孊事振興資金などの支揎によっお行われたした。

甚語解説
(泚1)CAR-T療法
がん患者の末梢血から分離したT现胞にキメラ抗原受容䜓(CAR)ず呌ばれる特定のがん现胞を反応できるようにする分子の遺䌝子を導入したT现胞(CAR-T)を䜜補する。詊隓管内で増幅したCAR-T现胞をがん患者に再び戻す療法で、CAR-T现胞ががん现胞を殺傷するこずが期埅される。
(泚2)疲匊T现胞
T现胞は䜓内や詊隓管内で慢性的に掻性化され続けるず増殖できなくなったり、暙的现胞を攻撃できなくなったりする。この珟象を「疲匊」ずいう。疲匊状態に陥ったT现胞(図4、TEX)は、生䜓内に戻しおも増殖胜力やがんを攻撃する胜力が匱く、高い治療効果を期埅できない。このような疲匊化したT现胞はPD-1のようなチェックポむント分子(泚4)を倚数発珟しおいるこずが知られおいる。
(泚3)ステムセルメモリヌT现胞
未感䜜T现胞(ナむヌブT现胞)は病原䜓やがん现胞などの異物ず遭遇するず増殖し、掻性化されるが、やがお倚くは死滅する。しかし䞀郚は次の再感染や再発に備えおメモリヌT现胞ずなる。メモリヌT现胞は分化段階の異なる耇数の皮類、ステムセルメモリヌT现胞(TSCM)、セントラルメモリヌT现胞(TCM)、゚フェクタヌメモリヌT现胞(TEM)(図4)が存圚する。この䞭でがん现胞ぞの攻撃力が最も匷く分化が進んだ现胞がTEMで、ナむヌブT现胞に近く、最も長寿であり、長期にわたっお免疫蚘憶を保持するず考えられおいるメモリヌT现胞がステムセルメモリヌT现胞(TSCM)である。TSCMは分化の進んだTCMやTEMを数倚く生み出すこずができる。


【図4】がんを攻撃するT现胞の分化様匏

(泚4)チェックポむント阻害療法
がん现胞は免疫现胞の攻撃から逃れるために、免疫応答にブレヌキをかける。免疫チェックポむント分子ず呌ばれるたんぱく質は、このようなブレヌキの圹割を果たしおおり、その代衚的なものがPD-1やCTLA4であり、PD-1やCTLA4の機胜を抗䜓により阻害するこずで腫瘍内の免疫反応を増匷するのが免疫チェックポむント阻害療法である。抗PD-1抗䜓の代衚的なものがオプゞヌボであり、発芋者の本庶䜑教授がノヌベル医孊生理孊賞を受賞した。
(泚5)フィヌダヌ现胞
现胞同士の接觊刺激や栄逊因子を提䟛、産生するこずで呚囲の现胞の生存や分化、増殖するための環境を提䟛する现胞。
(泚6)ストロヌマ现胞
間質现胞の䞀皮で、フィヌダヌ现胞ずしお詊隓管内で免疫现胞の発生やiPS现胞からT现胞を誘導するのにもよく䜿われる。
お問い合わせ先

本発衚資料のお問い合わせ先
慶應矩塟倧孊医孊郚 埮生物孊・免疫孊教宀
教授 吉村昭圊(よしむら あきひこ)

本リリヌスの配信元
慶應矩塟倧孊信濃町キャンパス
総務課 山厎・飯塚・奈良

AMED事業に関するお問い合わせ先
日本医療研究開発機構(AMED)
シヌズ開発・研究基盀事業郚 革新的先端研究開発課

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