かゆみを標的にしたアトピー性皮膚炎の新規治療薬の有効性を確認

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IL-31受容体の中和抗体によるアトピー性皮膚炎のかゆみと症状の緩和

2020-07-10 京都大学

椛島健治 医学研究科教授らの研究グループは、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(かゆみ)を対象として、日本国内で治療薬「ネモリズマブ」の第 III 相臨床試験(比較試験)を実施し、中程度から重度の患者のかゆみの改善と安全性を確認しました。

アトピー性⽪膚炎は、そう痒のある湿疹を主な病変とする疾患で、増悪と軽快を繰り返し、患者の⽣活の質を⼤幅に低下させます。このそう痒は、タンパク質の一種であるIL-31(インターロイキン31)が神経細胞に結合することで誘発されると考えられています。今回治験を行ったネモリズマブは、このIL-31を標的とした抗体製剤で、IL-31と神経細胞との結合を防ぎます。

本研究グループは、日本国内の13歳以上のアトピー性皮膚炎の患者計215人を対象に、臨床試験を実施しました。試験はステロイドなどの外用免疫抑制剤を併用しながら行い、143人にネモリズマブを、72人に有効成分を含まない偽薬(プラセボ)を、16週間にわたって4週間ごとに皮下投与して、有効性と安全性を調べました。その結果、偽薬を投与した場合にそう痒の程度が平均21.4%低下したのに対し、ネモリズマブの場合では平均42.8%の改善が見られました。また、湿疹や赤みの症状も改善され、重大な副作用は確認されませんでした。

本研究成果は、アトピー性皮膚炎のそう痒の作用メカニズムの特定につながる重要な結果であるばかりでなく、アトピー性皮膚炎の患者とその家族の苦しみ、そしてアトピー性皮膚炎がもたらす社会的損失の軽減につながる可能性があります。

本研究成果は、2020年7月9日に、国際学術誌「The New England Journal of Medicine」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

書誌情報
  • 朝日新聞(7月9日夕刊 8面)、京都新聞(7月9面夕刊 7面、7月10日 25面)、産経新聞(7月9日夕刊 9面)および読売新聞(7月9日夕刊 8面)に掲載されました。

詳しい研究内容≫

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医療・健康有機化学・薬学
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