ショウジョウバエが持つユニークな性染色体を用いて性染色体進化に関する共通のメカニズムを発見

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2021-10-25 国立遺伝学研究所

性染色体は多くの生物に存在する代表的な性決定機構のひとつです。性染色体は、もともとは常染色体に由来し、常染色体が性決定遺伝子を獲得することで性染色体になると考えられています。このようにして性染色体が生じると、X染色体とY染色体は減数分裂組換えを行わなくなり、その結果、Y染色体は多くの遺伝子を失い退化します。すると、オスはX染色体を1本しか持たないのに対し、メスはX染色体を2本持つという不均衡が生じるため、多くの生物は遺伝子量補償とよばれるメカニズムによってその不均衡を解消しています。しかし、性染色体が誕生したあと、どのようにして遺伝子量補償が発達するのかについては未解明な点が多く残されていました。

東京都立大学大学院理学研究科生命科学専攻の野澤昌文准教授、田村浩一郎教授らは、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授らの協力のもと、ネオ性染色体というユニークな性染色体を独立に獲得したショウジョウバエ3種を用いて、誕生した直後の性染色体がどのように進化するのかを研究しました。すると、誕生して間もないにもかかわらず、3種のネオY染色体はすでに退化しつつある状況にあることが分かりました。また、ネオY染色体上の遺伝子が機能しなくなると、ネオX染色体上の相同な機能遺伝子の発現量が上昇して、これを補っている傾向が見られました。さらに、このうち2種は同じ常染色体に由来するネオY染色体を持ちますが、同じ遺伝子が有意に多く機能を失っている傾向にあることが分かりました。したがって、性染色体は共通のメカニズムによって進化している可能性があります。今後、ショウジョウバエ以外の様々な生物の性染色体を調べることで、性染色体の進化プロセスをより一般化できるようになるかもしれません。

本研究は、日本学術振興会の科学研究費(25711023,15K14585,17H05015,21H02539 to M.N.)、および文部科学省のゲノム支援(221S0002 to A.T.)及び先進ゲノム支援(16H06279 to A.T.)の支援を受けて行われました。

この研究成果は10月22日、米国の科学誌「Genome Research」に掲載されました。

遺伝研の貢献
性染色体進化のメカニズムを明らかにするために、ネオ性染色体というユニークな性染色体獲得した3種のショウジョウバエのショットガンシーケンス(ロングリードとショートリード)およびゲノムアセンブリなどゲノム解読の基盤となる情報を整備しました。

本解析は、2015年度ゲノム支援、2016年度、2017年度、2019年度の先進ゲノム支援の支援課題としておこなわれたものです。

Figure1

図: 本研究で明らかになった性染色体の初期進化の流れ

Shared evolutionary trajectories of three independent neo-sex chromosomes in Drosophila

Nozawa M, Minakuchi Y, Satomura K, Kondo S, Toyoda A, Tamura K.

Genome Research 2021 Oct 21 DOI:10.1101/gr.275503.121

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