肝臓由来の細胞外小胞の抗炎症機能を発見 ~急性肝障害の治療法に新たな道~

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2021-10-26 東海大学,科学技術振興機構,日本医療研究開発機構

ポイント
  • 急性肝障害への治療は肝移植や間葉系幹細胞(MSC)を用いた再生療法など、治療が限定されていた
  • ヒト肝細胞由来の細胞外小胞は急性肝障害に対して組織保護的に働くことを明らかにした
  • 簡便で増殖の早い細胞を用いることで、肝移植などに限定されていた急性肝障害の新たな治療法を提示することができる

JST 戦略的創造研究推進事業、AMED 肝炎等克服実用化研究事業および次世代がん医療創生研究事業において、東海大学の幸谷 愛 教授は、柿崎 正敏 特任助教(当時)、山本 雄一朗 大学院生(当時)、中山 駿矢 研究員らとともに、ヒト幹細胞由来の細胞外小胞が急性肝障害に対して組織保護的に働くことを発見しました。

従来、急性肝障害に対しては肝臓移植の他、近年では間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)などを用いた新規治療法などの研究が進んでいましたが、問題点も多く、より簡便な急性肝障害に対する治療法の開発が望まれていました。

本研究グループは、ヒト肝細胞由来の細胞外小胞(extracellular vesicles:EVs)が分化多様性を持つ間葉系幹細胞のEVsと同等か、それ以上に急性肝障害に対して骨髄からの好中球の誘導を抑えるなど、保護的に働き、炎症を制御し得ることを明らかにしました。

さまざまな免疫調整効果を持つヒト肝細胞由来の細胞外小胞は急性肝障害に対する新たな治療法としてだけでなく、多様な肝臓の疾患に対する治療法への波及が期待されます。

本研究成果は、自治医科大学の亀田 和明 特別研究員、千葉大学の千葉 哲博 講師らをはじめとする複数機関との共同研究によって得られ、研究成果は、2021年10月26日(英国時間)に英国科学誌「Cell Death and Disease」のオンライン版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

研究領域:「細胞外微粒子に起因する生命現象の解明とその制御に向けた基盤技術の創出」
(研究総括:馬場 嘉信 名古屋大学 大学院工学研究科 教授)
研究課題名:「細胞外微粒子の1粒子解析技術の開発を基盤とした高次生命科学の新展開」
研究代表者:渡邉 力也(理化学研究所 主任研究員)
研究期間:平成29年10月~令和6年3月

JSTはこの領域で、細胞外微粒子に起因する生命現象の解明およびその理解に基づく制御技術の導出を目的とします。上記研究課題では、理・工・医学の融合により生体微粒子の組成・機能を解析し、疾患の制御に向けた新規医薬技術基盤の創出を目指します。

AMED 肝炎等克服実用化研究事業

研究課題名:「B型肝炎ウイルスRNAと相互作用する宿主因子の網羅的同定とその制御による病態制御法開発」
研究代表者:大塚 基之(東京大学 医学部附属病院 講師)
研究期間:令和元年~令和3年

AMED 次世代がん医療創生研究事業

研究課題名:「劇症型NK白血病における独特なニッチの分子基盤解明とその制御法開発」
研究代表者:幸谷 愛(東海大学 医学部 教授)
研究期間:令和2年~令和3年
研究課題名:「細胞外脂質代謝酵素によるエクソソームの脂質修飾を介したがん微小環境の制御」
研究代表者:村上 誠(東京大学 医学部 教授)
研究期間:令和2年~令和3年

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Human hepatocyte-derived extracellular vesicles attenuate the carbon tetrachloride-induced acute liver injury in mice”
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
幸谷 愛(コウタニ アイ)
東海大学 医学部 基盤診療学系 先端医療科学 教授

<JST事業に関すること>
保田 睦子(ヤスダ ムツコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーション・グループ

<AMED事業に関すること>
日本医療研究開発機構(AMED)
疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課

<報道担当>
東海大学 広報担当 喜友名 浩史(キユナ ヒロシ)
科学技術振興機構 広報課

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