2022-05-10 京都大学
大宮寛久 化学研究所教授、長尾一哲 金沢大学助教、中川雅就 同大学博士前期課程学生、松木祐樹 同大学学生らの研究グループは、温和な条件で、アルケンとアルコールを原料として、ジアルキルエーテルを合成することに成功しました。
ジアルキルエーテルは医薬品・天然物に見られる重要な構造の一つです。アルコールの酸素―水素結合を切断しアルケンに付加させる「アルケンのヒドロアルコキシ化反応」は、高い付加価値をもつジアルキルエーテル骨格を簡便に構築する有機合成手法として知られています。しかし、この反応を進行させるには硫酸のような強い酸の利用が必要であり、酸に弱い官能基を有する医薬品および天然物合成への適用は限られていました。
本研究では、青色LED照射下、弱い酸触媒、有機光酸化還元触媒、コバルト触媒の3つの触媒を活用することで、従来法よりも遥かに温和な条件でアルケンの分子間ヒドロアルコキシ化反応を達成しました。本手法は高度に官能基化されたジアルキルエーテル化合物を、容易に入手可能なアルケンとアルコール原料から、1段階で合成することが可能であり、創薬研究の加速につながると期待されます。
本研究成果は、2022年4月27日に、化学会誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。
本研究の概要図:光酸化還元/コバルト/ブレンステッド酸触媒によるアルケンのヒドロアルコキシ化反応
研究者情報
研究者名:大宮 寛久