タンパク質リン酸化による液-液相分離制御のしくみを解明~細胞内非膜型オルガネラの構築原理の解明へ~

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2022-05-12 京都大学

吉村成弘 生命科学研究科准教授、山﨑啓也 同博士課程学生(現:東京大学助教)、平野達也 理化学研究所主任研究員、高木昌俊 同専任研究員、小迫英尊 徳島大学教授らは、タンパク質の翻訳後修飾であるリン酸化が、核小体などの細胞内非膜型オルガネラの構造形成および機能発現で重要な役割を果たす「液-液相分離」を制御する新たな仕組みを解明しました。リン酸化は、タンパク質の立体構造変化を介してその機能を調節することが知られていましたが、立体構造を持たない(天然変性)タンパク質の機能を制御するしくみは不明でした。本研究では、リン酸基による負電荷の付加が天然変性タンパク質の「電荷ブロック」を増減させることで、「液-液相分離」を正または負に制御していることを明らかにしました。本研究成果は「タンパク質の翻訳後修飾」と「液-液相分離」とを繋ぐ重要な知見です。核小体は、細胞増殖、ウイルス増殖、自然免疫反応、がん、ストレス応答に関係する非膜型オルガネラであり、今後、この知見に基づく作用機序の解明や新たな治療法の開発につながる研究成果が期待されます。

本研究成果は、2022年5月5日に、国際学術誌「Nature Cell Biology」に掲載されました。

(解説動画)YouTube : https://www.youtube.com/watch?v=mEUWk451FBU

タンパク質リン酸化による液-液相分離制御のしくみを解明~細胞内非膜型オルガネラの構築原理の解明へ~
図:天然変性タンパク質「Ki-67」のリン酸化が液-液相分離を制御する仕組み。Ki-67は分裂間期には脱リン酸化状態にあり(左段)、分裂期移行に伴いリン酸化を受ける(右段)。(A)リン酸化と電荷ブロックとの関係。非リン酸化型Ki-67は正の電荷ブロック(水色)のみを持つが、リン酸化により負の電荷ブロックが出現し、正・負の電荷ブロックが交互するポリマー(上段)となり強い液-液相分離を示す。(B)Ki-67の液-液相分離。脱リン酸化型は液滴を形成しないが、CDK1でリン酸化すると液-液相分離が亢進して液滴を形成する。間期細胞中のKi-67は核小体周辺に局在するが、分裂期移行とともに分裂期染色体の辺縁部(非膜型オルガネラ)を形成する。

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:吉村 成弘

書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41556-022-00903-1
【書誌情報】
Hiroya Yamazaki, Masatoshi Takagi, Hidetaka Kosako, Tatsuya Hirano, Shige H. Yoshimura (2022). Cell cycle-specific phase separation regulated by protein charge blockiness. Nature Cell Biology.

細胞遺伝子工学
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