光誘導物質による新しい体内時計の同調制御機構~光により誘導される神経細胞の活動抑制物質の発見~

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2022-05-26 京都大学

体内時計には、約24時間周期のサーカディアンリズムを生み出す仕組みだけでなく、このリズムのタイミングを環境の明暗変動に一致させるシステム(同調機構)があります。これは、眼で受けた光の明暗情報が視神経から体内時計中枢である視交叉上核に伝達され、この時刻を動かすことで行われます。哺乳類では、時刻を一度に3時間以上動かすことはできないことが知られています。しかし、その制限が作られる仕組みについては分かっていませんでした。

今回、松尾雅博 薬学研究科特定助教(現:滋賀医科大学)、岡村均 医学研究科研究員(京都大学名誉教授)、冨永恵子 大阪大学准教授らの研究チームは、光が神経活動を抑制する低分子量Gタンパク質Gemを誘導し、これが体内時計の細胞の活動を抑制し、過剰に動くことを防いでいることを明らかにしました。光刺激で時計細胞に発現したGemが、細胞が興奮するときに開く電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)を抑制することで、細胞内へのカルシウムイオン流入量を減少させます。体内時計は、この仕組みをつかって、適切な時間の長さの時刻変動が起こるように調節していることが明らかになりました。

本研究成果は、2022年5月25日に、国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されました。

光誘導物質による新しい体内時計の同調制御機構~光により誘導される神経細胞の活動抑制物質の発見~
眼に光が入ると、その情報は網膜で受容され、それが視神経に伝わり、その神経線維は、体内時計の中枢である視交叉上核に至ります。光情報は、神経終末からのグルタミン酸の放出に変換され、このグルタミン酸を視交叉上核の時計細胞は、グルタミン酸受容体で受けとります。夜間、時計細胞はこの光刺激を受けて興奮し、電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)が開き、細胞外からカルシウムイオンが細胞内に流入します。このシグナルは最終的に、細胞核に到達すると、クロマチンリモデリングが起こり、CREBのリン酸化によりCREが活性化し、時計遺伝子Perの転写が促進され、体内時計がシフトします。それと同時に、Gem遺伝子の転写も促進され、できたGEMがVDCCの抑制因子となってカルシウムイオンの流入を抑制します。これにより、過剰な体内時計のシフトが防止されます。

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:岡村 均

生物化学工学
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