細胞にかかるストレスが、がんを発生させるしくみ~DNA の異常な修復を誘導する、タンパク質と RNA の「かたまり」~

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2022-06-03 東京大学

1.発表者:
安原 崇哲(東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター 放射線分子医学部門 助教)

2.発表のポイント:
◆紫外線や低温刺激などのストレスにより、タンパク質と RNA からなる「かたまり」(注1)が細胞内にでき、タンパク質の設計図(注2)に異常が生じやすくなることがわかった。
◆このような異常な設計図からできたタンパク質は、がんを発生・進展させることが知られており、今回発見した現象は細胞にかかるストレスが、がんを発生させるメカニズムの一つである。
◆種々のストレスが我々の DNA に異常を発生させるしくみが明らかになったことで、様々な病気の原因の解明につながり、将来的には病気を予防、治療できるようになると考えられる。

3.発表概要:
東京大学大学院医学系研究科の安原崇哲助教、マサチューセッツ総合病院の Lee Zou 教授らの国際共同研究グループは、細胞に紫外線や低温刺激などのストレスを与えると、細胞の核(注3)の中にある核小体(注4)とよばれる部分にタンパク質と RNA からなる凝集体(かたまり)が形成されることを明らかにしました。この「かたまり」は我々の DNA の中で特に活発に読み出されている、タンパク質の設計図部分を巻き込んで核小体周辺に集合させ、複数の設計図部分が空間的に近づいてしまうことがわかりました。DNA に損傷を与えた状態で「かたまり」を誘導するストレス与えると、複数の DNA 損傷部位が互いに近づき、間違えた末端同士をつないでしまうことで2つの遺伝子が融合した設計図ができてしまいました。このような異常な設計図からできた融合タンパク質の一部は、がんを発生・進展させることが知られており、今回発見した現象は細胞にかかるストレスが、がんを発生させるメカニズムの一つであると考えられました(図1)。今回、種々のストレスが我々の DNA に異常を発生させるしくみが明らかになったことで、がん以外の様々な病気の原因の解明にもつながると考えられます。
本研究成果は、米国科学雑誌「Molecular Cell」のオンライン版に掲載されました。

詳しい資料は≫

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