社会のつながりのうらおもて~新型コロナウイルス感染拡大の実態調査とグローバルな対立への教訓~

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2022-06-30 京都大学

私たちは、つらい時に仲間とつながり元気をもらう事があります。しかし仲間意識は過度になるとグループ間の対立をひき起こす事もあります。この様な社会の絆(きずな)の2面性は、これまで繰り返し指摘されていますが、コロナ禍での実態は、まだよくわかっていません。鄭志誠 医学研究科研究員と藤野純也 同博士課程学生(現:東京医科歯科大学講師)は、社会の絆や共感という一見ポジティブとみなされやすい概念の両面を、分析的レビューと質的調査によりコロナ禍の体験と関連づけ、認知の柔軟性という解決法を提示し、集団間の対立等の一般的な社会問題への提言を行いました。

分析の結果、人々のつながりを大切にする態度や共感を伴う表現はソーシャルメディア等を通じて孤独感を和らげる一方、同調圧力によりうわさや中傷を恐れたり、自分とは異なるグループに対する偏見(例:非ワクチン接種者)や攻撃的行動とも関連しうる事が示唆されました。そしてコロナ禍の様に、刻々と状況が変わる様な場面では、特定の思いに固執せず、色々な視点で柔軟に出来事を理解する傾向の人々の方が、対立や葛藤に対してより適応的な傾向も示されました。心身の疲弊や社会の混乱が長期化し、コミュニケーションのスタイルも変化している中、本研究の結果は、人との関わり方をみつめなおし、現在世界的にも広がる不安定な社会情勢をよりよく理解する上でも有用なヒントとなる事が期待されます。

本研究成果は、2022年6月24日に、国際学術雑誌「Nature Humanities and Social Sciences Communications」に掲載されました。


社会的絆が関わる負のスパイラルと、これを低減する認知の柔軟性の説明モデル。
恐怖、偏見、対話不足は、集団間の対立を助長したり不安を増強する。一方様々な視点で柔軟に出来事を理解する傾向の人々の方が、これらの負の要因を減弱させうる。

研究者のコメント

「調査を通じて、私たちは仲間意識や思いやりを大事にする中でも、いつの間にか色々な意味で誰かを疎外・敵対しうるのだなと実感しました。私たち一人一人の心の持ちようが、少なからず現在の社会・世界の状況に影響しうるのではないか、という事を世間に伝えたいです。簡単にゆがむ他者の絆と共感、そしてこれらを補正しうる、心のしなやかさの理論は、これまで認知神経科学の実験などを通じて若干学んでいましたが、この実態を新型コロナウイルス感染拡大下の体験報告や学術論文を介して垣間見る事ができました。最後にこの知見が少しでも現在のグローバル化した不安定な社会情勢の理解の一助になる事を祈念しています。」(鄭志誠)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:鄭 志誠

書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1057/s41599-022-01210-8

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/274666

【書誌情報】
Shisei Tei, Junya Fujino (2022). Social ties, fears and bias during the COVID-19 pandemic: Fragile and flexible mindsets. Humanities and Social Sciences Communications, 9:202.

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