2022-07-12 京都大学
加藤真 人間・環境学研究科教授と曽田貞滋 理学研究科教授は、日本では絶滅したと考えられていた水生昆虫キイロネクイハムシを、滋賀県琵琶湖で再発見したことを報告しました。キイロネクイハムシは体長4ミリ程度で、クロモなどの沈水植物を餌とし、卵から成虫まで水中で過ごします。その生息には溶存酸素量が多く、透明度の高い水質が不可欠です。日本では1960年代以降、採集されておらず、環境省のレッドリストでは、絶滅種とされています。琵琶湖では、1950年代に行われた鳥類の食性調査で、ホシハジロの胃内容物から成虫が見つかっており、約70年ぶりの生息確認となります。
今回の再発見は、絶滅種とされるような希少な生物種が私達の身近にも、気づかれることなく生存している可能性を示唆しています。キイロネクイハムシの再発見を機に、人目につきにくい水生生物の保全策にも注意を向けることが望まれます。
本研究成果は、2022年7月2日に日本昆虫学会の英文誌「Entomological Science」にオンライン掲載されました。
生息場所の様子(左、撮影・加藤真)と水中でセンニンモの茎を伝って歩く成虫(右、撮影・曽田貞滋)
研究者のコメント
「キイロネクイハムシはかつて、日本列島の平野部の、水草群落の発達した池沼に生息していたと考えられます。1962年を最後にキイロネクイハムシの記録が日本列島から途絶えたことは、日本の高度成長とともに、豊かな低湿地生態系が日本列島からほとんど失われてしまったことを示唆しています。今回のキイロネクイハムシの再発見は、水草群落の発達した低湿地生態系が、奇跡的にも琵琶湖に残されていたということを意味するだけでなく、日本列島の低湿地生態系の生物多様性を未来に残すための多くの示唆と、そして一縷の望みを与えてくれます。」(加藤真)
研究者情報
研究者名:加藤 眞
研究者名:曽田 貞滋