移植の成功に重要なのは、「質の良い」筋肉~コンピュータ断層撮影を用いて評価した骨格筋指標での検討~

ad

2022-07-12 京都大学

濱田涼太 医学部附属病院理学療法士、新井康之 同助教、近藤忠一 医学研究科非常勤講師、髙折晃史 同教授(細胞療法センター長)、松田秀一 同教授(リハビリテーション部部長)らの研究グループは、同院で実施された同種造血幹細胞移植後の患者さん186人のデータを用いて、移植前のコンピュータ断層撮影(CT)によって評価される骨格筋(大腰筋)の量および質が移植後の予後に及ぼす影響を検討しました。その結果、従来知られていた造血細胞移植特異的併存疾患指数(HCT-CI)高値などに加えて、移植前における骨格筋の質的変化が移植後の予後に影響を及ぼすことを明らかにしました。この骨格筋の「質」を決定する具体的要素は、骨格筋の細胞質内に過剰に蓄積している脂肪であり、これにより脂肪変性が進行しているかを判断します。

近年、サルコペニアやがん悪液質などで代表される骨格筋の減少は移植後の成績に影響を及ぼすことが示され、移植前時点での骨格筋評価の重要性が明らかになってきています。しかし、脂肪変性が進行した「質の悪い」骨格筋においては骨格筋量が過大評価される可能性があります。従来、この筋肉の質に関しては、よい評価指標がありませんでした。今回の研究ではCT画像を用いて骨格筋の質を正確に評価することに成功し、さらに質の悪化、すなわち脂肪変性の進行が移植後の予後指標として有用であることを証明しました。この成果は、移植前後のリハビリテーションを含む集学的治療をより強化することによって、同種造血幹細胞移植後の成績改善につながる可能性を示唆しています。

本研究成果は、2022年6月19日に、移植・細胞療法学会の学会誌「Transplantation and Cellular Therapy」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
移植の成功に必要なのは、「質の良い」筋肉であることを示したグラフ。全生存割合(移植が成功するか否か)を筋肉の「量」「質」毎に示しています。筋肉の質が移植成績に大きな影響を及ぼすことが分かります(右図)

研究者のコメント

「医学部附属病院では、血液内科、リハビリテーション部、血液内科病棟、栄養士、薬剤師などがチームを組み、移植前の時点より患者さんの医学的状態、体力や筋力、栄養状態などを評価し、情報共有を行いながら、移植に向けてのチーム医療を実践しています。本研究で明らかになった骨格筋の脂肪変性の進行はCT画像を用いて各移植施設で簡便に評価することが可能です。今回の研究が、移植成績向上につながることを期待しています。」(濱田涼太、新井康之)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:新井 康之
研究者名:近藤 忠一
研究者名:髙折 晃史
研究者名:松田 秀一

ad

医療・健康
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました