2023-06-14 京都大学
動物は、痛み(痛覚)を感じると、とっさに危険から逃れようとします。この逃避行動は、さまざまな条件により、強められたり弱められたりすることが知られていました。しかし、これまでその調節メカニズムはよくわかっていませんでした。
今回、李愷(LI, Kai) 生命科学研究科研究員、司悠真 同博士課程学生(学振特別研究員DC1)、上村匡 同教授、碓井 理夫 同講師らの研究グループは、ショウジョウバエ幼虫の逃避行動をモデルにゲノムワイド関連解析をおこない、痛みによる逃避行動を抑制する遺伝子を発見しbelly roll(bero)遺伝子と名付けました。さらに、bero遺伝子が痛覚を伝導する神経細胞で働いていること、そして、そこで痛み信号を抑制していることを発見しました。類似の痛み抑制現象は報告例がなく、まったく新しい痛み調節機構が発見されたことになります。ヒトにもbero相同遺伝子があるため、この痛み調節機構を詳しく調べていくことで、痛みを制御する新しい治療法が見つかることが期待されます。
本研究成果は、2023年6月13日に、国際学術誌「eLife」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「『氏か育ちか』という言葉がある通り、生き物に個体差が生まれる理由には遺伝子と環境があると考えられています。私たちは、動物の個体差を生み出す『氏』に相当すると考えられる遺伝子berry rollを発見しました。将来的には、『育ち』に相当する環境も含めて研究していくことで、生き物の多様性の謎に迫れるのではないかと期待しています。」(司悠真)
詳しい研究内容について
痛みを抑制するタンパク質を発見!―痛覚多様性からのアプローチ―
研究者情報
研究者名:上村 匡
研究者名:碓井 理夫