放射線・抗がん剤に対する両親の職業性ばく露と死産・流産と形態異常のリスクとの関連 ~子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)について~

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2025-01-31 九州大学

環境発達医学研究センター
落合 正行 学術研究員

ポイント

  • エコチル調査の約10万組の親子のデータを用いて、エコチル調査九州大学サブユニットセンターは、職業上の理由による両親の抗がん剤・放射線の取り扱いと、死産・流産および形態異常との関連を調べました。
  • 従来、死産・流産や形態異常のリスク因子として知られていた職業性の抗がん剤・放射線の取り扱いが、防護方法の発達した現代においてはリスクとならない可能性が示唆されました。ただし、妊婦に関しては抗がん剤・放射線を取り扱った方法・時期・量や防護方法の詳細が明らかでないなどの制約があり、さらなる詳細な調査が必要です。

概要

九州大学病院小児科(エコチル調査福岡ユニットセンター)山本俊亮医員(医学系学府博士課程4年)および九州大学環境発達医学研究センターの落合正行学術研究員らの研究チームは、エコチル調査の約10万組の親子のデータを使用して、両親が職業で取り扱った放射線・抗がん剤と、死産・流産や形態異常の発生との関連について解析しました。その結果、従来は死産・流産や形態異常のリスク因子とされていた職業上の放射線・抗がん剤の取り扱いが、現代においてはリスクではなくなっている可能性が示唆されました。

本研究の成果は、2025年1月11日付でElsevierから刊行される周産期医学分野の学術誌「Early Human Development」に掲載されました。
※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省および国立環境研究所の見解ではありません。

山本氏からひとこと

本研究の結果は、現代の防護対策の進歩により、職場での放射線や抗がん剤の取り扱いが子どもの健康に与える影響を軽減できる可能性を示しました。今後もより詳細なデータを基に、安全性の確認とさらなる改善に向けた取り組みを続けてまいります。

論文情報

掲載誌:Early Human Development
タイトル:Parental occupational exposure to anticancer drugs and radiation: Risk of fetal loss and physical abnormalities in The Japan Environment and Children’s Study
著者名:山本 俊亮1、實藤 雅文1,2、井上 普介1、井上 雅崇1、下茂 優1、東矢 俊一郎1、鈴木 麻也1、安部 希1,3、濱田 律雄3,4、大場 詩子1、中島 健太郎1,5、落合 正行1,3、菅 礼子6、古賀 友紀1,5、辻 真弓6,7、加藤 聖子4、大賀 正一1、JECSグループ1,2

1九州大学病院小児科
2佐賀大学医学部小児科
3九州大学環境発達医学研究センター
4九州大学病院産科婦人科
5九州大学大学院医学研究院 周産期・小児医療学
6エコチル調査産業医科大学サブユニットセンター
7産業医科大学衛生学
8グループ:エコチル調査運営委員長(研究代表者)、コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンターから構成
DOI:10.1016/j.earlhumdev.2025.106195

お問合せ先

環境発達医学研究センター 落合正行 学術研究員

医療・健康
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