2020-05-04 東京大学
発表のポイント
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者から分離されたウイルスの、ネコの呼吸器における増殖能とネコ間での感染伝播能を解析した。
- 新型コロナウイルスはネコの呼吸器でよく増え、さらにネコ間で接触感染することが分かった。
- 新型コロナウイルスはネコに感染し、ネコの間で広がる可能性があることが示唆された。
発表内容
米国ニューヨーク州の飼いネコ2匹から新型コロナウイルスが検出されました。さらに、米国ニューヨーク市の動物園では、トラやライオンなどのネコ科動物で新型コロナウイルス感染が報告されています。
本研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者から分離されたウイルスのネコにおける増殖能と感染伝播能を解析しました。その結果、新型コロナウイルスは、ネコの呼吸器でよく増えること、接触感染によってネコの間で容易に感染伝播することが明らかになりました(図1)。また、本ウイルスに感染したネコは明らかな症状を示さないことも分かりました。
本研究成果によって、新型コロナウイルスがネコの間で広がる可能性があることが示唆されました。この成果は、行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となります。なお、厚生労働省と日本獣医師会それぞれから愛玩動物の新型コロナウイルス感染症に関する見解が出ていますので、あわせてこちらもご参照ください。
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/doubutsu_qa__00001.html
日本獣医師会
https://seo.lin.gr.jp/nichiju/suf/topics/2020/20200502_02.pdf
本研究成果は、2020年5月13日米国科学雑誌「New England Journal of Medicine (NEJM)」のオンライン速報版で公開されました。
なお本研究は、東京大学、米国ウィスコンシン大学、国立国際医療研究センター、国立感染症研究所が共同で行ったものです。本研究成果は、日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業の一環として得られました。
図1 ネコを用いた新型コロナウイルス感染伝播実験
新型コロナウイルスをネコの鼻腔内に接種した。その後、感染ネコとの接触によってウイルスが同居ネコに伝播するのかどうかを調べた(図の左)。3ペア中3ペアにおいてウイルスが伝播した(図の右)。また、ウイルスはネコの呼吸器でよく増えることも分かった(図の右)。
発表論文
雑誌名:「New England Journal of Medicine (NEJM) 」5月13日オンライン版
論文タイトル:Transmission of SARS-CoV-2 in Domestic Cats
著者:河岡 義裕
DOI:10.1056/NEJMc2013400
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