臨床検体を用いた抗体検出試薬の性能評価に関する報告

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国立がん研究センター、国立国際医療研究センター、シスメックスが国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部の支援のもとSARS-CoV-2抗体検査法の臨床性能評価を実施

2020-06-11 国立がん研究センター,国立国際医療研究センター,シスメックス株式会社

国立研究開発法人国立がん研究センター(所在地:東京都、理事長:中釜 斉 以下「NCC」)と、国立研究開発法人国立国際医療研究センター(所在地:東京都、理事長:國土 典宏 以下「NCGM」)、シスメックス株式会社(本社:神戸市、代表取締役会長兼社長 CEO:家次 恒 以下「シスメックス」)は、 新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019 以下「COVID-19」)を引き起こすウイルス(以下、「SARS-CoV-2」)の抗原・抗体検査法に関する共同研究を実施しており、その概要と抗体検査の臨床性能評価の結果についてお知らせします。なお、NCCおよびNCGMには、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)から研究支援が行われています。

SARS-CoV-2が体内に潜入することで生じる感染症であるCOVID-19は、高い感染力を有し、急激な重症化を引き起こすとともに、多くの無症候性キャリアが存在するといわれており、2020年6月8日現在、全世界で感染者690万人、死者40万人、日本国内でも感染者1万7千人、死者900人まで達しています(注1)。現状、日本国内においては、COVID-19の第1波が収束しつつありますが、今後も第2波、3波の感染拡大が予測されています。COVID-19の再拡大に備え、感染直後から、治療・回復期までをカバーする新たな検査法の確立が急務となっています。

これまでNCCとNCGM、シスメックスは、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2の抗原・抗体検査法に関する臨床性能評価の共同研究を2020年5月から実施しています。本共同研究では、NCCおよびNCGMの両センターは、臨床評価用の検体を提供するとともに、臨床現場の観点から、臨床的に必要とされる検査法の開発提言を担当し、シスメックスは、化学発光酵素免疫測定法を用いて開発した、鼻咽頭拭い液中の抗原および血液中の抗体(IgG、IgM)に関する検出試薬と、両センターから提供された検体を用いて測定および臨床性能解析を担当します。なお、本共同研究は、新たに発足した国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)による診断・医薬実用化支援の一環として行われています。

シスメックスが開発した抗体検出試薬は、自社の全自動免疫測定装置とともに用いることで、ヌクレオカプシドタンパク質(N抗原)(注2)、スパイクタンパク質(S抗原)(注3)に特異的に反応する抗体(IgG、IgM)を個別に検出することが可能です。

これまでの成果として、本検出試薬を用いた「SARS-CoV-2陰性群」と「退院時のSARS-CoV-2患者群」間における血中のN抗原、S抗原に対するIgG抗体の濃度の比較において、図1 のとおり患者群で抗体量の上昇がみられ、陰性群と明らかな弁別性能を示す結果が得られました。本結果は、本検出試薬が、幅広い疫学的研究や、ワクチンの効果モニタリングなどの臨床応用へ活用できるとともに、今後の治療法開発において重要な知見となることを示唆していると考えられます。

化学発光酵素免疫測定法を用いたIgG抗体検出データ

図1 陰性群(n=300)と退院時の患者群(n=33)の間において

図1 陰性群(n=300)と退院時の患者群(n=33)の間においてIgG抗体の定量値に
統計学的な有意差を確認

陰性検体はNCCで保管されていたCOVID-19流行以前の血清、および、退院時検体はNCGMから提供された血清を使用

NCCとNCGM、シスメックスは、今後予測されるCOVID-19の再拡大に備え、臨床用途に適応した検査法の迅速な確立により、COVID-19の診断・治療に貢献します。

シスメックスのCOVID-19への取り組み

シスメックスは、臨床検査機器・試薬メーカーとして、世界中の医療現場で行われている臨床検査の継続実施を支援し、COVID-19拡大防止に尽力される医療従事者の皆様と共にこの困難を乗り越えることが使命と考えており、そのための「製品・サービスの安定供給」に全力を挙げて取り組んでいます。また、COVID-19の拡大防止および一日も早い沈静化に貢献するため、国内初となる新型コロナウイルスPCR検査キット(RT-PCR 法)の薬事承認取得や、全国に先駆けて神戸市との産官連携によるPCR 検査体制強化に加え、「新たな診断技術の開発」に積極的に取り組んでいます。https://www.sysmex.co.jp/COVID19.html(外部サイトにリンクします)

国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(Japan Health Research PromotionBureau:JH)について

国立研究開発法人国立がん研究センター、同国立国際医療研究センター、同国立循環器病研究センター、同国立精神・神経医療研究センター、同国立成育医療研究センター、同国立長寿医療研究センターの6国立研究開発法人は高度な医療に関し、調査・研究・技術開発と提供を行っています。厚生労働省及び6法人は、令和2年4月から、新たなニーズに対応し、6法人連携により実臨床に繋がる画期的な研究開発を加速させることを目的として国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)を発足させました。今回、迅速かつ効率的にSARS-CoV-2対策に関する研究開発を支援することを決定し、本プロジェクトに賛同する企業の開発、臨床試験の支援に取り組んでいます。

 

注釈

(注1)

World Health Organization「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)WHO公式情報特設ページ」より(2020年6月8日現在)https://extranet.who.int/kobe_centre/ja/news/COVID19_specialpage(外部サイトにリンクします)

(注2)ヌクレオカプシドタンパク質(N抗原)

ウイルスの基本構造であり、ウイルスの性質に大きく影響するタンパク質

(注3)スパイクタンパク質(S抗原)

ウイルスの周りに無数に突き出したタンパク質であり、細胞の受容体と結合することで感染が生じます

報道関係からのお問い合わせ先

国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室

国立研究開発法人国立国際医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

シスメックス株式会社 IR・広報部 担当:林・瀬古

関連ファイル

国立がん研究センター、国立国際医療研究センター、シスメックスが国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部の支援のもとSARS-CoV-2抗体検査法の臨床性能評価を実施(PDF:564KB)

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