2020-10-02 京都大学
雨森賢一 高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)特定拠点准教授、雨森智子 同研究員、Helen Schwerdt マサチューセッツ工科大学博士、Ann Graybiel 同教授らの研究グループは、神経振動を表す脳の電気信号とドーパミン濃度を表す化学信号を同時に計測する技術を開発しました。
脳のドーパミン低下は、運動や気分の障害を伴うパーキンソン病を引き起こすことが知られています。パーキンソン病では、大脳基底核の線条体においてベータ波と呼ばれる神経振動の亢進が見られることから、これまでは、ベータ波はドーパミンと逆相関する、と単純に捉えられてきました。本研究では、行動課題遂行中のマカクザルのベータ波とドーパミン信号を同時に記録し、ベータ波とドーパミンの逆相関が、尾状核では期待報酬などの価値に依存して現れ、被殻では運動に依存して現れることを明らかにしました。つまり、ベータ波とドーパミンの逆相関は一様なものではなく、神経核の機能と関連して現れることがわかりました。この新しい知見は、パーキンソン病の診断と治療のための新しい指針となるものと期待されます。
本研究成果は、2020年9月26日に、国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。