肺線維症治療薬探索への活用に期待
2021-02-26 京都大学
後藤慎平 医学研究科特定准教授、金墻周平 同研究員、萩原正敏 同教授らの研究グループは、II型肺胞上皮細胞の一部の特徴を持つ細胞を作成し、この細胞を使用して、アミオダロンの副作用である肺線維症を改善しうる化合物を同定することに成功しました。
肺の機能維持にはII型肺胞上皮細胞が必須であり、この細胞は様々な呼吸器の病気に関係する細胞であることが知られています。しかし、II型肺胞上皮細胞の機能を模倣でき、たくさんの化合物の中から薬を選び出す作業のために低コストで簡便に利用可能な細胞が存在しなかったため、研究の大きな制約となっていました。
本研究では、複数の遺伝子を細胞に導入することで、II型肺胞上皮細胞の機能を一部模倣できる細胞の作製に成功しました。この細胞を用いて、不整脈の治療薬であるアミオダロンで誘発される肺線維症を改善する化合物を探索し、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを同定しました。今回作製した細胞は、II型肺胞上皮細胞の機能異常に関係した疾患の解明に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2021年1月25日に、国際学術誌「American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究の概要図
研究者情報
研究者名:後藤慎平
研究者名:萩原正敏
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1165/rcmb.2020-0119OC
Shuhei Kanagaki, Takahiro Suezawa, Keita Moriguchi, Kazuhisa Nakao, Masayasu Toyomoto, Yuki Yamamoto, Koji Murakami, Masatoshi Hagiwara, and Shimpei Gotoh (2021). Hydroxypropyl Cyclodextrin Improves Amiodarone-Induced Aberrant Lipid Homeostasis of Alveolar Cells. American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology.