2021-01-05 京都大学
合成・生物化学専攻の永木愛一郎 准教授、宅見正浩 研究員、阪上穂高 修士課程学生らの研究グループは、世界に先駆けてわずか数秒での電気分解が可能な新規フロー反応装置の開発に成功し、医薬品およびその他有用な化合物の迅速合成を達成しました。
電気分解を利用した合成反応は、有害な化学試薬の代わりに電気(=電子)を用いて反応を行うことができ、環境負荷が小さいため近年非常に注目を集めています。しかし、従来の装置では電気分解に数時間以上の長い時間が必要であり、すぐに分解する高反応性化学種を用いた反応には適用が難しいという課題がありました。
本研究では、溶液を流しながらわずか4秒で電気分解を完了させることができるフロー反応装置を開発し、これを用いることで高い反応性を持つ不安定炭素カチオン種を発生させ、医薬品に用いられる化合物を20秒に満たない時間で製造することが可能になりました。今後は、新しい反応開発への応用と製造プロセス導入に向けた展開を目指します
この成果は、2021年12月20日にドイツ化学会の雑誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載されました。
図:本研究の概要(新規電気分解装置を用いた医薬品前駆体の高速合成)
研究者情報
永木愛一郎
書誌情報
DOI:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202116177
Masahiro Takumi,Hodaka Sakaue,Aiichiro Nagaki(2021).Flash Electrochemical Approach to Carbocations. Angewandte Chemie International Edition