2022-02-24 京都大学
生物多様性、例えばある場所の生物種の数がどのように決まるかを理解することは生態学の最も大きな課題の一つです。これまでの理論研究・室内実験から、多様性の決定機構には生物種間の相互作用が重要な役割を果たしていると考えられてきました。しかし、技術的な困難さから、膨大な種数が存在しうる野外の生物群集を網羅的に調べ、種間相互作用と多様性(種数)の関係を研究した例はこれまでありませんでした。
今回、潮雅之 白眉センター特定准教授 は、環境DNAによる網羅的生物モニタリングと非線形時系列解析を駆使し、野外生物群集の相互作用と種数の関係を詳細に研究しました。その結果、生物が「他種とどのくらい相互作用できるか」すなわち「相互作用容量」が種数の決定に重要な役割を果たしていることを見出しました。さらに、今回発見した相互作用容量と種数の関係に基づいたモデルは、様々な生態系の生物種数を精度良く予測できることも発見しました。
本研究で提示した「相互作用容量仮説」は様々な生態系における生物群集の種数・種間相互作用・個体数変動、さらにはそのメカニズムまでも統一的に説明できる可能性を秘めています。
本研究成果は、2022年2月23日に、国際学術誌「Proceedings of the Royal Society B」にオンライン掲載されました。
図:実験水田から採水し、生物群集をモニタリングし、そのデータから相互作用ネットワークを再構築した。右図は生物種間の相互作用網を表している(例えば紺色の線は細菌が他の種に及ぼす影響を示す)。
研究者情報
研究者名:潮雅之