日本医療研究開発機構

生物化学工学

情動行動を規定する新たなイオンチャネルの特定~忌避学習を制御する細胞内シグナル伝達経路の解明~

不快情動のひとつである忌避学習に関わる分子メカニズムを明らかにしました。マウス脳の側坐核において、忌避刺激が電位依存性カリウムチャネルKCNQ2のリン酸化レベルを亢進させることを明らかにしました。忌避刺激によるKCNQ2リン酸化は、ムスカリンM1受容体( M1R)やPKCの活性化を必要とすることが分かりました。側坐核でのKCNQ2欠損は忌避学習を促進させることが明らかになりました。
有機化学・薬学

シグナル伝達の「偏り」を生み出すリン酸化機構の解明~副作用を切り分けたGPCR作動薬の開発に貢献~

薬剤の主要な作用標的であるGタンパク質共役型受容体(GPCR)の機能を調節する因子のGPCRキナーゼ(GRK)について、その活性制御機構を明らかにしました。降圧薬の標的として知られる1型アンジオテンシンII受容体(AT1受容体)に関して、薬理作用の異なる作動薬が、別々のGRK選択性とβアレスチン機能を誘導することを見出しました。
医療・健康

自閉スペクトラム症には脳内のドーパミンD2/3受容体の減少が関連し、社会的コミュニケ―ションの困難さや脳部位間の機能的な結びつきに関与していることが明らかに

自閉スペクトラム症(ASD)と診断される方の多くに、脳内でドーパミンD2/3受容体の減少を認めました。この減少は、ASDの中核症状である社会的コミュニケーションの困難さや、ASDに特徴的とされる脳部位間の機能的な結びつきに関与することを見出しました。脳内ドーパミンD2/3受容体の減少は、ASDの「社会的動機付け仮説」を裏付けるものであり、新たな治療薬開発の標的となりうることを支持する研究成果です。
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医療・健康

世界初、悪性骨腫瘍に対する承認(実用化)を目指した、腫瘍溶解性ウイルスの第Ⅱ相医師主導治験(多施設共同)を開始

独自開発した腫瘍溶解性アデノウイルスのSurv.m-CRA-1(サバイビン反応性・多因子増殖制御型アデノウイルス)の第Ⅰ相試験を実施・完了し、安全性と治療効果の両面で良好な結果を得ました。この成果を踏まえ、世界初の悪性骨腫瘍への承認(実用化)を目指した多施設共同(鹿児島大学、国立がん研究センター中央病院、久留米大学)の第Ⅱ相試験を開始します。
生物化学工学

昆虫ホルモンの生合成を撹乱する蚊の発育阻害剤の発見~環境に優しい農薬の開発に向けて~

既存の殺蚊剤に対して抵抗性を示す蚊の出現が確認されています。そのため、単一の薬剤に過剰に頼るのではなく、作用機序の異なる複数の薬剤をローテーションして使用することで、薬剤抵抗性の出現を回避する戦略が不可欠です。デング熱、黄熱、ジカウイルス感染症を媒介するネッタイシマカ由来のNoppera-boの活性を阻害する薬剤を探索しました。その結果、植物の二次代謝物としてよく知られるフラボノイド化合物であるデスメチルグリシテインが極めて有効であることを発見し、さらにX線結晶構造解析注2)によって分子レベルでの作用機序の解明に成功しました。
生物工学一般

脳の神経活動を可視化する新規マウス系統を開発

高感度・高速カルシウムセンサーを安定して発現する遺伝子改変マウスの開発に成功しました。正確な神経活動の計測を実現するため、高感度・高速カルシウムセンサー(G-CaMP9a)の開発と、この新規センサーを細胞種特異的に発現誘導可能な遺伝子改変マウス(G-CaMP9aノックインマウスの作製をおこないました。2光子励起顕微鏡注2を用いた生体イメージングにより神経細胞の活動を観察したところ、このマウスは感覚刺激に対する神経細胞の応答をより正確に検出できることが明らかとなりました。
医療・健康

新たなイントラクライン機構を用いた加齢性眼疾患治療へ~眼局所のホルモンの加齢変化とサーカディアンリズムが鍵~

加齢によって生じるドライアイの原因疾患に対し、眼局所のホルモンを制御するイントラクライン機構の発見という独自の新所見に基づいた、新たな作用機序の治療アプローチを見出すことに成功しました。このイントラクライン機構を眼のまぶたのマイボーム腺に見つけ、そのホルモン合成酵素の解明に基づいた補酵素点眼療法により、高齢者のドライアイの主原因となる同腺機能不全を改善できることを明らかにしました。マイボーム腺の機能には顕著な日周リズム(サーカディアンリズム)があり、酵素の活性ピーク時刻を狙った投薬が最も有効であることも明らかにしました。
医療・健康

リン酸化酵素・γ型プロテインキナーゼCが運動制御に 重要な役割を果たすことを解明

成熟期の小脳プルキンエ細胞に存在するプロテインキナーゼCγ(PKCγ)が協調運動の制御に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。PKCγはBKチャネルの機能を抑えることで、樹状突起を信号が伝わりやすくすること、その結果、小脳皮質からの出力信号が大きくなり、滑らかな(協調)運動が可能になることが明らかになりました。
医療・健康

男性腹圧性尿失禁治療に関する医療機器の国内承認取得のお知らせ

サイトリが開発した高度管理医療機器であるセルーション セルセラピーキット SUIについて、男性腹圧性尿失禁治療のための医療機器として、国内製造販売承認を取得しました。
有機化学・薬学

6型コラーゲン欠損筋ジストロフィーに対する細胞治療法の開発

6型コラーゲンが欠損して発症する筋ジストロフィー:ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー(UCMD)のマウスモデルにiPS細胞由来間葉系間質細胞(iMSC)を全身投与したところ、細胞組織の病態の改善および運動機能の改善を確認できた。細胞組織における病態の改善は、iMSC移植による筋再生の促進、筋細胞のアポトーシス注3)抑制、ミトコンドリア異常の改善が寄与していることを見出した。
生物化学工学

孤独を感じ仲間を求める脳内回路~親和的社会性に重要な分子と神経回路の発見~

雌マウスが孤独を感じ仲間を求める行動に重要な分子神経機構を発見しました。孤立状態を感知し、仲間と一緒にいようとする雌マウスの親和的社会行動は、cMPOAのアミリンとCalcrとの結合によって制御されていることが分かりました。
生物化学工学

チャネル(膜タンパク質)の開閉モデルの提唱~チャネルの通路を塞ぐ「脂質」が深く影響~

ATP(アデノシン三リン酸)放出チャネル(膜タンパク質)として知られるパネキシン1が、脂質に埋まった状態のクライオ電子顕微鏡構造を報告しました。ATPなどイオンよりも大きな分子を通すチャネルの開閉に、脂質が深く関わる可能性が示唆されました。
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