マウスを透明にして血管・リンパ管を3次元・高解像度で可視化~位相的データ解析による新たな脈管構造評価法の確立~

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2022-09-12 東京大学

1. 発表者:高橋 恵生 (東京大学大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 分子病理学/東京大学医学部 MD 研究者育成プログラム 助教(研究当時))
宮園 浩平 (東京大学大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 応用病理学 卓越教授)
島村 徹平 (名古屋大学大学院医学系研究科 先端応用医学 システム生物学 教授)

2.発表のポイント:
◆組織透明化手法 CUBIC によりマウス血管・リンパ管を臓器のまま3次元かつ高解像度で可視化することに成功しました。
◆位相的データ解析と呼ばれる数理学的手法を取り入れ、臓器レベルでの3次元の脈管構造を総合的に評価する系を立ち上げました。
◆本手法は新たな脈管構造解析のパイプラインとして、今後広く活用されることが期待されます。

3.発表概要:
近年、血管やリンパ管など脈管構造の解析に3次元画像が用いられることが増えています。しかしながら、1細胞レベルの詳細な解析には未だ免疫組織学的手法を用いた2次元の画像解析が一般的です。また、取得された画像の評価には脈管の分岐点や長さ、幅といったパラメータが利用されており、脈管構造を「形」から総合的に評価する手法はこれまで確立されていませんでした。今回、東京大学大学院医学系研究科の宮園浩平卓越教授、高橋恵生助教(研究当時)らの研究グループは同研究科並びに理化学研究所の上田泰己教授との共同研究により組織透明化手法 CUBIC によりマウスのさまざまな臓器を透明化し、血管・リンパ管を臓器のまま3次元かつ高解像度にて可視化することに成功しました。さらに、名古屋大学大学院医学系研究科の島村徹平教授らのグループとの共同研究により、それら取得した画像を位相的データ解析などの数理学的手法を取り入れて解析することで、3次元の脈管の構造を総合的に評価する方法を新たに確立しました。また、本研究ではこれら新たな脈管構造評価法を用いて、マウス肺線維症モデルやがんの肺転移モデルなどの病態モデルでリンパ管の構造が変化することを数理学的に示しました。本手法はこれまでのように脈管の分岐点や長さといったある特定のパラメータに依存するのではなく、データの「形」から全体の構造の違いを推測できます。そのため、これまでは見逃していた脈管構造の違いをも捉えることも可能となります。今後、本手法は新たな脈管構造解析のパイプラインとして広く活用されることが期待されます。

本研究は日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業、文部科学省 科学研究費補助金新学術領域研究「細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御」、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)などの支援を受けて行われました。本研究成果は「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。

詳しい資料は≫

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