鶴岡市立荘内病院と国立がん研究センター東病院、遠隔支援による腹腔鏡下手術を実施~地域のがん医療のための新たな手術支援モデルの確立を目指す~

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2022-12-26 鶴岡市立荘内病院,国立がん研究センター

発表のポイント

  • 遠隔による手術指導(支援)システムを用いて第1例目の腹腔鏡下S状結腸切除術を実施しました。
  • 山形県鶴岡市の荘内病院で行われている腹腔鏡下手術*1の映像を、千葉県柏市にいる東病院の外科医がリアルタイムで確認し、口頭や図示で荘内病院の外科医を支援しました。
  • リアルタイムでの遠隔手術支援の実現により、地域の患者さんの医療の選択肢の増加および腹腔鏡下手術の普及、若手外科医の教育機会の拡大等につながることが期待されます。
  • 今後さらに遠隔アシスト手術の経験を重ね、地域のがん医療支援モデルの確立と全国への普及を目指します。

概要

鶴岡市立荘内病院(病院長:鈴木 聡、山形県鶴岡市、以下「荘内病院」)と国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市、以下「東病院」)は12 月初旬、遠隔による手術指導システムを用いて腹腔鏡下S状結腸切除術を実施しました。東病院と荘内病院との医療連携による遠隔アシスト手術は両病院では初となり、国内でも先駆的事例となります。

今回、山形県鶴岡市の荘内病院で行われている腹腔鏡下手術の映像を、千葉県柏市にいる東病院の外科医がリアルタイムで確認し、口頭や図示で荘内病院の外科医を支援しました。平均タイムラグ0.027秒という高速通信・映像技術と両院の連携により、安全に手術は実施されました。患者さんの経過は良好で、容体も非常に安定しています。

リアルタイムでの遠隔手術支援の実現により、地域の患者さんの医療の選択肢が増えるとともに、遠方からの移動に伴う身体的・精神的・経済的負担が軽減されます。また、外科医不足および外科医の過剰労働に伴う指導医不足や、新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」)などの感染症拡大に伴う行動制限による手術指導・支援機会の喪失に対応する、新たな地域医療支援方法として期待されます。

東病院と荘内病院は今後さらに遠隔アシスト手術の経験を重ね、課題を抽出し改善していくことで、地域のがん医療支援モデルの確立と全国への普及を目指します。また、対象疾患の拡大や国外への展開も視野に入れ、取り組んでまいります。

背景

腹腔鏡下手術は低侵襲的であるなどの利点から、消化器・一般外科や産科婦人科など多数の領域の手術に応用されています。しかし、腹腔鏡下の手術野で特殊な器具を用いて行う手術であるため高度な技術と経験が要求され、腹腔鏡下手術の普及や若手外科医の指導のためには経験豊富な指導医による手術指導・支援が必要不可欠です。

従来は腹腔鏡下手術の普及のため、指導医が病院を直接訪問して手術指導・支援を行っていました。しかし、昨今の外科医不足による指導医不足や外科医の過剰労働によって、直接訪問する時間を確保することや、さらに、COVID-19のような感染症拡大の際には行動制限により、病院訪問自体が難しい状況となっています。このような状況において、通信・映像技術の進歩に伴い遠隔による手術指導システムが開発され、現地を訪問せずに安全に手術指導・支援を行うことが可能となりました。そのため、手術指導・支援の機会を増やすことが可能となり、腹腔鏡下手術の普及や若手外科医の教育機会の拡大につながることが期待されています。

実施内容

東病院と荘内病院は医療連携の一環として、「リアルタイム遠隔手術支援モデル確立プロジェクト」を立ち上げました。遠隔アシスト手術の実現に向け、両病院におけるシステムの準備や外科医間での手術方法の確認、手術中の意思決定や責任の所在・個人情報の取り扱いなどに関する覚書の締結などを進めてきました。

本プロジェクトでは、遠隔による手術指導システム(TELEPRO(Rマーク)*2)を用いて、東病院大腸外科の日本内視鏡外科学会技術認定*3取得者が荘内病院の外科医が行う腹腔鏡下手術を支援します。東病院の外科医は自施設の専用パソコンから荘内病院で行われている腹腔鏡下手術の映像をリアルタイムに見ることができ、荘内病院の外科医に対して、専用パソコンの画面上に記載する指示線や口頭で支援します。荘内病院の手術室には腹腔鏡下手術の映像を映すメインモニターのほかに、東病院の外科医の指示線を映すサブモニターが設置され、音声や指示線を参考に手術を行います。

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図 遠隔アシスト手術の概要

東病院と荘内病院の医療連携について

地域医療への貢献と鶴岡市におけるがん医療の高度化を図ることを目的に、2020年7月8日、医療連携に関する協定を締結しました。本協定により、荘内病院内に「がん相談外来」を開設し、東病院の専門医が月に1回程度診療を行っています。また、オンラインセカンドオピニオンの検証研究、高難度手術の東病院での実施と荘内病院での術後フォローアップ、東病院のがん看護専門研修への参加などに取り組んでいます。

◆参考プレスリリース
2020年7月9 日 国立がん研究センター東病院と鶴岡市立荘内病院、医療連携に関する協定締結~地域のがん医療の支援と遠隔診療の実現を目指す~
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0709/index.html

研究費

国立がん研究センター研究開発費
「診療現場の業務改善やオンライン診療に資するAI・IT活用基盤の構築に関する研究」(2021-A-9)

用語解説

*1 腹腔鏡下手術
お腹を炭酸ガスで膨らませ、腹部に数か所あけた5-12mm程度の小さな穴から道具を挿入して行う手術。腹腔内に挿入した内視鏡により腹腔内(術野)の状態をモニターに映し出し、術者はモニターを見ながら手術を行う。

*2  TELEPRO(Rマーク)
札幌医科大学教授竹政伊知朗氏と天馬諮問株式会社が共同開発した遠隔手術指導システム。

*3 日本内視鏡外科学会技術認定
日本内視鏡外科学会が手術技術の審査(技術認定試験)を行い、各関連領域において内視鏡手術に携わる医師の技術を高い基準にしたがって評価し、後進を指導するにたる所定の基準を満たした者を認定するもの。消化器・一般外科部門の合格率は2~3割程度。

問い合わせ先

患者さん・医療関係者・企業からのお問い合わせ
国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 大腸外科

取材・報道関係からのお問い合わせ
鶴岡市立荘内病院 総務課
国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)

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