適切な外来診療によって入院を防ぎうる疾患の院内死亡率がパンデミック初期に上昇

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2023-06-23 東京大学

発表のポイント
◆新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う医療提供体制の変化によって、「適切な外来診療によって入院を防ぎうる疾患 (Ambulatory Care Sensitive Conditions: ACSCs)」に該当する入院患者の転帰がどのように変わったのかわかっていませんでした。
◆2020 年 4 月の緊急事態宣言の発令以降、ACSCs の中でも急性疾患(例:胃腸炎や脱水など)に分類される患者の院内死亡率や病院到着後 24 時間以内の院内死亡率が上昇していました。それは院内死亡数の増加と入院患者数の減少によって説明されました。
◆本研究結果は、パンデミック初期の日本において、住民が適切な外来医療にアクセスできていなかった可能性を示唆しています。


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発表概要
東京大学大学院医学系研究科の阿部計大(客員研究員)、宮脇敦士(助教)、国立国際医療研究センターの射場在紗(上級研究員)、ハーバード T.H.Chan 公衆衛生大学院の河内一郎(教授)による共同研究グループは、日本のパンデミック初期において、「適切な外来診療によって入院を防ぎうる疾患 (Ambulatory Care Sensitive Conditions: ACSCs)(注 1)」による入院患者の死亡率がどう変化したのかを調査しました。その結果、ACSCs のうち、急性疾患の患者(胃腸炎や脱水のような急性発症の疾患)の院内死亡率や、患者の病院到着後 24 時間以内の院内死亡率が上昇していることが明らかになりました。院内死亡率の上昇は、院内死亡数の増加と入院患者数の減少によって説明されました。

これまでのカナダや米国、日本の先行研究では、パンデミック中に ACSCs による入院数が減少していることが報告されてきました。しかし、それが患者にとって良かったことだったのか (健康であったということなのか)、それとも本来は入院が必要であった患者が入院できなかったことを示しているのか明らかではありませんでした。本結果は、パンデミック期間中に、 ACSCs の急性疾患患者(その多くは発熱等の COVID-19 類似症状をきたす)が、適切な外来および入院医療にアクセスできていなかった可能性を示唆しています。パンデミックにおいては、特に流行している疾患と同様の症状をきたし得る疾患の患者に対して、医療へのアクセスを十分に担保する対策が必要だと考えられます。

本研究結果は、2023 年 6 月 22 日(米国東部夏時間)に米国医師会(American Medical Association)が発行する医学雑誌「JAMA Network Open」にオンライン掲載されました。

詳しい資料は≫

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