2023-09-20 京都大学
生田宏一 医生物学研究所教授、阿部真也 同特定助教らの研究グループは、血球細胞が産生するサイトカインIL-15が骨髄のナチュラルキラー(NK)細胞の分化に必須であることを明らかにしました。さらに、NK細胞が骨髄内で散在型とクラスター型に局在していることを発見しました。
NK細胞はIFN-γを産生することで、抗ウイルス・抗腫瘍免疫応答を促進する免疫細胞です。NK細胞はIL-15に依存して骨髄内で分化しますが、その産生源やNK細胞が分化する骨髄微小環境は不明でした。本研究では、細胞特異的なIL-15欠損マウスやNK細胞のイメージング解析を用い、骨髄の単球や樹状細胞が産生するIL-15がNK細胞の分化に必須であることを発見しました。さらに、骨髄内のNK細胞には散在型とクラスター型の局在を示す2種類の集団が存在し、散在型NK細胞の分布にはケモカインCXCL12が必要であることを明らかにしました。したがって、本研究は、血液細胞が他の血液細胞の分化に必須であることを初めて明らかにし、骨髄内NK細胞の新規分化モデルを提唱しました。さらに、2つのNK細胞集団の体内動態や機能の違いを解明し感染や腫瘍の治療に応用し、生体外でNK細胞を作製する再生医療技術に発展することが期待されます。
本研究成果は、2023年9月19日に、国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されました。
造血細胞が産生するIL-15は散在型とクラスター型で局在する骨髄NK細胞の分化に必須である
研究者のコメント
「NK細胞は腫瘍やウイルス感染応答に重要な免疫細胞です。今後、ウイルス感染や癌の骨転移などの際に、骨髄のIL-15産生細胞やNK細胞局在がどのように変化し病態に関与しているのか明らかにすることで、治療や創薬への橋渡しに繋げていきたいと考えています。」(阿部真也)
詳しい研究内容について
骨髄のNK細胞の分化に造血細胞が産生するIL-15が必須である―2種類の局在を示すNK細胞の新規分化モデル―
研究者情報
研究者名:生田 宏一
研究者名:阿部 真也