2型糖尿病を伴う心不全患者の微量アルブミン尿に対するダパグリフロジンの予防・抑制効果に関する臨床試験(DAPPER試験)について

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2023-11-28 国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の臨床研究開発部北風政史前部長、腎臓・高血圧内科吉原史樹部長らを中心としたわが国内18施設による多施設共同研究チームは、2型糖尿病を伴う慢性心不全患者において5㎎を中心としたダパグリフロジン投与が尿アルブミン排泄量への効果を認めないものの、心血管イベントを抑制することを同定致しました。
本研究結果は、世界でも初めての知見であり2023年11月2日に米国腎臓病学会のLate Breadking sessionで発表され、11月27日にLancetの姉妹紙であるeClinicalMedicineに掲載されました。

■背景

糖尿病は、心血管疾患のみならず腎臓病を引き起こすことがよく知られています。SGLT2阻害薬(1)であるダパグリフロジンは、糖尿病治療薬として最近上市され、このダパグリフロジンが糖尿病のみならず、心不全や腎不全を改善することが示されてきましたが、糖尿病を有する心不全患者さんに対して、ダパグリフロジンを使用した時に腎機能障害が改善するかどうかは明らかでありませんでした。
(1)腎臓に作用しブドウ糖を尿に排泄させることで血糖を下げる薬

■研究手法

そこで、2型糖尿病を伴う慢性心不全の症例に対して、ダパグリフロジン投与量を5㎎から開始し10㎎まで増量可能とし尿中アルブミン排泄量を抑制するか否か、さらに心血管イベントをも抑制できるか否かについて、多施設共同、無作為化、非盲検、標準治療対照、並行群間比較として実施し、2年間経過観察しました。心不全ではダパグリフロジンを10mg投与しますが、本試験は糖尿病+心不全の症例を対象としているため、ダパグリフロジンは5mg/10mgのどちらを投与しても可といたしました。

■結果

その結果、2年間の観察期間終了時のダパグリフロジン群において87.7%の患者で5㎎が投与されており、主要評価項目の尿中アルブミン排泄量に標準治療群とダパグリフロジン群間で有意差を認めませんでしたが、副次評価項目の心血管イベントは標準治療群に比べてダパグリフロジン群で抑制されていることが明らかになりました(図1,2参照)。

■今後の展望と課題

2型糖尿病を伴う慢性心不全患者において5㎎を中心としたダパグリフロジン投与が心血管イベントを抑制した報告は今回が初めてです。本研究の成果は、2型糖尿病を伴う慢性心不全患者の治療戦略を考える上で貴重な根拠のひとつとなると考えられ、大きく臨床医学に貢献するものと期待されます。

2型糖尿病を伴う心不全患者の微量アルブミン尿に対するダパグリフロジンの予防・抑制効果に関する臨床試験(DAPPER試験)について

■発表論文情報

著者: Fumiki Yoshihara, Miki Imazu, Ichiro Sakuma, Yukio Hiroi, Hisao Hara, Osamu Okazaki, Chizuru Ishiguro, Chisato Izumi, Teruo Noguchi, Toshihiko Shiraiwa, Norio Nishioka, Kenshi Fujii, Katsuomi Iwakura, Osamu Tomonaga, Koichi Kobayashi, Masahiro Takihata, Kazuhiko Yumoto, Hiroyuki Takase, Toshiharu Himi, Ikki Shimizu, Tsutomu Murakami, Kenji Wagatsuma, Katsuhiko Sato, Takeyuki Hiramatsu, Satoshi Akabame, Shiro Hata, Masanori Asakura, Takanori Kawabata, Katsuhiro Omae, Shin Ito, Masafumi Kitakaze, on behalf of the DAPPER Investigators
題名:DAPagliflozin for the attenuation of albuminuria in Patients with hEaRt failure and type 2 diabetes (DAPPER study): a multicentre, randomised, open-label, parallel-group, standard treatment-controlled trial
掲載誌:eClinicalMedicine
論文URL:https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(23)00511-4/fulltext

■謝辞

本研究は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。
・アストラゼネカ株式会社
・小野薬品工業株式会社

【報道機関からの問い合わせ先】

国立循環器病研究センター企画経営部広報企画室

有機化学・薬学
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