ゼブラフィッシュの視覚に関する脳神経回路は網膜からの入力なしに発生する

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2024-01-18  国立遺伝学研究所

脳の発生は、先天的なメカニズムと経験に依存するメカニズムの両方によって組み立てられるが、それらの寄与を区別するのは難しい。本研究で我々は、脊椎動物の発生過程において、網膜からのあらゆる視覚刺激を欠如させた場合脳の視覚刺激受容野がどのように発生するか?の問いに答えた。ゼブラフィッシュlakritz変異体を用いて、網膜からの全ての神経接続を欠損させ、仔魚期の脳の視覚刺激受容部位のニューロンの転写プロファイリングを行ったところ、個々の遺伝子発現制御に変化がみられたが、77の異なるニューロンタイプのセットは、見かけ上正常な割合、正常な位置、および正常な分化経路に沿って発生した。明らかになったのは、これらの領域の増殖中の神経系前駆細胞の細胞周期終了が遅れ、未分化な分裂後初期前駆細胞の割合および前グリア細胞に運命転換する割合が増加していたことである。通常視覚情報処理に関与するニューロン群を対象にして光遺伝学的な刺激を施したところ、野生型と区別できない行動を引き起こした。結論として、網膜からの入力は視覚に関する脳領域の神経発生の速度に影響を与えるが、その結果生じるニューロンの発生や回路形成への影響は検出されないことを示した。

本研究は、ドイツMax Planck Institute のBaier研究室と川上研究室の共同研究として行われました。

ゼブラフィッシュの視覚に関する脳神経回路は網膜からの入力なしに発生する図:(A)視覚刺激受容部位のニューロンでGFPを発現するトランスジェニックゼブラフィッシュ(HGn12C)。
(B) HGn12Cにlakritz変異を導入し(中央)、GFP陽性神経細胞の転写プロファイリング解析を行った。


Retina-derived signals control pace of neurogenesis in visual brain areas but not circuit assembly

Sherman, S., Arnold-Ammer, I., Schneider, M.W., Kawakami, K., and Baier, H.

Nature Communications (2023) 14, 6020 DOI:10.1038/s41467-023-40749-1

生物化学工学
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