2024-01-23 京都大学
ブラシノステロイド(BR)は、植物の葉・茎・根の器官伸長など、植物形態形成を促進的に調節する植物ステロイドホルモンです。BRは同時に植物の葉緑体発達や光合成活性も制御することが知られていましたが、その制御を実際に担う因子や具体的な制御の仕組みについては明らかになっていませんでした。
立花諒 生命科学研究科博士課程学生(日本学術振興会特別研究員)、中野雄司 同教授、山上あゆみ 同助教、宮川拓也 同准教授、浅見忠男 東京大学教授、久城哲夫 明治大学教授、阿部晋 同修士課程学生(研究当時)、丸上萌々 同修士課程学生(研究当時)らの共同研究グループは、葉緑体発達を適正に制御する新規因子BPG4を、BR生合成阻害剤Brzを用いたケミカルバイオロジー研究によって発見しました。BPG4は、BRおよび光により発現制御され、葉緑体チラコイド膜の層構造と連動する葉緑体発達を抑制する機能を持ち、さらに強光下における光合成過剰によって引き起こされる活性酸素ストレスから回避させる生物学的な役割も持つ新規因子であることが明らかとなりました。本研究によるBPG4の発見は、葉緑体発達制御の分子機構の解明、植物の葉緑体発達や光合成活性が適正に制御された新植物の創製を目指す新技術開発などに繋がると期待されます。
本研究成果は、2024年1月8日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
BPG4発現量の強弱により植物体の緑化度(上段)・葉緑体発達度(中段)は制御される。
中段黄線:葉緑体内の光合成の場であるチラコイド膜層構造の電子顕微鏡観察像
研究者のコメント
「大気中の二酸化炭素増大による地球温暖化・気候異常変動が深刻化する現代において、大気中の二酸化炭素を吸収し植物体に固定する葉緑体の制御機構、葉緑体を支え制御する植物個体レベルの成長制御機構の研究は一層重要になると考えられます。本研究によって得られたBPG4は、長らく探されていたBRシグナル伝達下流で葉緑体発達制御と光合成活性制御の本質を担う鍵遺伝子を発見した、という基礎研究の観点から重要なマイルストーンになると考えていますが、同時に植物成長制御技術の開発においても役立つ可能性が期待出来る遺伝子と考えられるため、地球環境改善・食糧増産などに貢献する応用研究へも発展させて行きたいと考えています。」(中野雄司)
詳しい研究内容について
研究者情報
研究者名:立花 諒
研究者名:中野 雄司
研究者名:山上 あゆみ
研究者名:宮川 拓也